注目すべきは、この病気は進行性であるということだ。つまり、多くの人は、最初は何の心配もない軽い症状から始まり、すぐに生命を脅かす病状に進行し、死に至る可能性があるのだ。幸い、肺がん患者の救済に焦点を当てた治療法は、この20年間で飛躍的に拡大した。とはいえ、がんの早期発見が、死亡率を大幅に減少させる唯一の手段であることに変わりはない。
最近登場したこの分野での注目すべき成果は、マサチューセッツ工科大学(MIT)とマサチューセッツ総合病院(MGH)が発表した、たった1回だけのCTスキャンのデータを使って肺がんリスクを予測できる「Sybil(シビル)」という深層学習モデルだ。この研究は、Journal of Clinical Oncology(臨床腫瘍学会誌)で正式に発表されたものだが「パーソナライズされた将来のがんリスク評価を行うツールを使うことで、最も恩恵を受けられる可能性の高い人にアプローチを集中させることができる」と論じている。この中で、研究責任者たちは「追加の年齢特性や臨床データを必要とすることなく、個人のリスクを予測するために、ボリュメトリックLDCT(低線量CT)データ全体を評価する深層学習モデルを構築できる」と主張している。
このモデルは「LDCT画像の中には、肺結節などの現在識別可能な特徴以上に、将来の肺がんリスクを予測できる情報も含まれている」という基本的な考えから出発している。こうして、開発者たちは「1回のLDCTスキャンから6年先までの肺がんリスクを予測する深層学習アルゴリズムを開発・検証し、その潜在的な臨床的影響を評価する」ことを目指した。
全体として、これまでのところ、この研究は目覚ましい成功を収めている。Sybilは、たった1回のLDCTのデータを使って、患者の将来の肺がんリスクをある程度の精度で予測することに成功した。