マサチューセッツ工科大学ら、肺がんを発見できるAIシステム開発

転移性肺がんを示すCTスキャン(Getty Images)

もちろん、この技術の臨床的な応用や意義は、まだ発展途上の段階だ。研究リーダーでさえ、この技術を実際の臨床現場に正確に適用する方法を見出すためには、まだまだ多くの作業が必要であることを認めている。特に、技術の信頼度を、医師や患者がシステムのアウトプットに安心して頼ることができるレベルへ高めなければならない。

それでも、このアルゴリズムは非常に強力であり、予知診断の領域を大きく変える可能性を秘めている。

こうした診断手段がこれほど強力になったのは初めてのことだ。たった1回のCTスキャンで長期的な疾患の働きを予測できるツールは、早期治療の開始による死亡率の引き下げなど、多くの問題を解決できる可能性がある。

評論家は、最初のうちは、このようなシステムに反対するかもしれない。AIシステムは、人間の医師に取って代わるほど十分に判断力と臨床能力を持ち得る可能性はないというのだ。だが、このようなシステムの目的は、必ずしも医師の専門知識に取って代わろうとするものではない。むしろ医師のワークフローを補強できる可能性があるのだ。

Sybilのようなシステムは、医師が手軽にレコメンデーションツールとして使用することができる。システムはCTから読み取れる懸念事項の可能性を医師に警告し、医師は自身の臨床判断に従ってSybilの意見を取り入れるか否かを判断することができる。これにより、臨床の効率が向上するだけでなく、二次的な「チェック」プロセスとして機能し、診断の精度が高まる可能性がある。

もちろん、この分野にはまだやるべきことがたくさんある。科学者、開発者、イノベーターには、実際のアルゴリズムやシステムそのものを完成させるだけでなく、この技術を実際の臨床応用に導入するための微妙な関門を通過するという旅が待っている。だが、それが安全で倫理的で効果的な方法で開発される限り、患者ケアの改善に対するその技術、意図、それが持つ可能性は、きたるべき診断の誕生に有望なのだ。

forbes.com 原文

翻訳=酒匂寛

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