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2023.02.06

「ChatGPTを競争戦略上どう生かすか、なくなる仕事は?」を議論した

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思う以上に多くの仕事がなくなる

クマベイス田中森士CEO:分かりやすいところで浮かぶのは、俗にいう「コタツ記事」(インターネットの検索結果をまとめただけの記事)を書く仕事、単純なデータ解析やレポートをまとめるなどの「フィジカルな接触や体験がないもの」などはなくなっていくでしょう。ただし、Googleも体験・経験に基づくコンテンツを求めていることですし、ユーザーもそうです。ある種、世の中が求める流れともいえます。

また、かなり前の話にはなりますが、2017年に米国の投資銀行、ゴールドマンサックスがAIを導入することによって、株式売買をするトレーダーを600人から2人に減らしたという記事がありました。それを支えていたのは200人のコンピュータ・エンジニアです。

クマベイス田中森士CEOクマベイス田中森士CEO

クマベイス田中森士CEO:この事実が示唆するのは、「AIを使いこなせる人材」の需要が増すということです。AIをどう使えば、もしくはどう使いこなせば、自分たちの生活や経済活動を効率的に進められるのかを考えられる人、「AI使い」ともいえる人材の価値が当面は高くなると思います。

ただ、AIは先ほど述べた「ピラミッド」をどんどん登っていきますから、「AI使い」の立場が未来永劫において安泰かというと、それは分かりません。

インターネット黎明期にインターネットが使えたり、ホームページを作ることができる人材が重宝されたのと少し似ているかも知れません。だた、学生や新人の社会人でも「AI使い」は、確実に重宝されると思います。

EXIDEA小川卓真CEO:ChatGPTで衝撃だったのは、AIが言語を扱う仕事の領域まで一気に進出してきたことでしょう。AIは比較的数学的な領域、数値分析やその分析を基にした株式の自動売買のような仕事を置き換えていくことをイメージしていたら、ChatGPTはいきなり言語領域を大幅に浸食してしまった。

インターネット業界でいえば、数値分析を基にした広告運用の自動化から、文字を中心とした「広告のクリエイティブの作成」までAIが担当するようになったという印象です。これからの広告担当者は、是非や好みはさておき、コピーライティングのプロセスをスキップして、AIが作成した複数のコピー(クリエイティブ)から、採用するものを選ぶのが仕事だと考える人が出てきても不思議ではありません。

数学的以外の言語領域の仕事は置き換えられ、部分的な業務委託はなくなる

EXIDEA小川卓真CEO:ここでもポイントは「どこをChatGPTに任せればいいのか」ということになるかと思います。

田中さんの「AI使い」の話と半ば一緒になりますが、企業の経営としても「どこをAIに置き換え出来るのか」という視点が、競争戦略上も重要になってくると思います。業務分析や細分化が行われ、AI化が進むでしょう。結果、部分部分を請け負っている仕事や業務の委託は無くなっていくと考えています。

極端な例でいうと、部分部分のソフトウェアの開発やシステム開発の外注も簡単なレベルからAI化が進行するでしょう。Chat CPTはプログラミングデータも多く学習している点も特徴で、ノーコード(プログラミング言語を書かないで、画面上でソフトウェアを作ること)から一気に飛躍して、発注者が「〇〇をするプログラムを書いて」と、言語で指示することが、既にある程度可能になっています。

──日本では雇用の流動性を高めるべく、ジョブ型雇用・スキル別採用が声高に叫ばれる中、ChatGPTの能力を前にして、この先、人間はどこまで専門分化した領域を仕事にするべきなのか。なかなか深淵な命題にも見えます。少なくともChatGPTと付き合う能力は必要になると思えてなりません。
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インタビュー・文=曽根康司 編集=石井節子

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