ChatGPTが進化しても残る仕事
──これからの仕事を考えると、楽しい半分、なんだか憂鬱な気分にもなる人もいると思いますが、ChatGPTが進化しても残る仕事とは、どのような仕事でしょうか?具体的な仕事や概念について、お考えをお聞かせください。EXIDEA小川卓真CEO:ChatGPTがこれから進化しても弁護士や裁判官の仕事はなくなることはないと考えています。立法や司法を全てAIに任せるという国家が成立しない限り、法の最終的なジャッジは人間が行う必要があるからです。
メーカーや、データの取りにくい、言い換えれば稀少な仕事もなくならないでしょう。芸術家や舞台監督などはその例と言えます。また、新しく出来た仕事についてはデータの蓄積がないので、ChatGPTの学習が追いつかないと考えられます。
さらに今はVUCAの時代(変動幅が大きく、不確実で、複雑で、曖昧さを含む)時代です。ChatGPTといえども、速い時代とVUCAに対応していくのは難しいでしょう。
ChatGPTのような自然言語処理モデルのAIによって最も影響を受けるのはテキストやプログラミングコードを主体とするWeb領域の仕事だと思いますが、同領域においてはChatGPTなどのAIがデータに依存することを逆手に取って「正確なデータを保有、独占」している仕事や企業は、これからも残り、強さを発揮していくと考えます。
正確なデータを保有したものが強者
EXIDEA小川卓真CEO:正確なデータを持っているか、持っていないかの差が加速度的に広がって、パワーゲームが起きるかも知れません。その帰結が良いことか悪いことか分かりませんが「正確なデータ」の時代が来ることは確かだと思います。分かりやすい一例として、これはChatGPTを使ってみれば分かることですが、ChatGPTはデータが少ない分野への質問に対しては極めて弱いです。たとえば、「第〇代の総理大臣の経歴を教えて」と質問した際、在任期間が短かったり、その人物に言及されたデータが少ない場合は、きちんとした回答が返ってくることはありません。
そして、人々はChatGPTの使い方に慣れてくると、ChatGPTが答えられない質問が事前に分かるようになります。その時、人々は誰に質問するでしょうか。その道の第一人者、オーソリティーに聞いたり、その人が提供するメディアを通じて情報を得るようになるでしょう。
クマベイス田中森士CEO:これは私の専門でもある「コンテンツマーケティング」のキャリアパスに関連して出てきたワードなのですが「T型人材」という概念があります。セールスフォースのコンテンツストラテジストであるエイミー・ヒギンス氏が、コンテンツマーケティングの世界で活躍し、キャリアを重ねるにはジェネラリストでもなく、スペシャリストでもない「T型人材」になる必要があると訴えました。
「T型人材」の価値が上がる
クマベイス田中森士CEO:アルファベットの「T」を思い浮かべていただきたいのですが、「T」の横棒がジェネラルなスキル、「T」の縦棒がスペシャルなスキルということになります。ジェネラリストの要素を持ちながらも、ある分野ではスペシャリストである。そのようなスキルセットをもった人材がこれから重要になり、価値が上がると思います。さきほどの「AI使い」の話に戻りますが、AIを使うに当たっては、AIについて理解していないといけません。そして、AIをどの対象や範囲に対して適用させるか、その判断をするのはジェネラリストとしてのスキルがないと出来ないというわけです。AIを理解した「T型人材」の価値は高まり続けるでしょう。