小手先(盛り付け)のイノベーションではない
EXIDEA小川卓真CEO:これまでのGPT-3は「教師なし学習」(機械学習の手法で答えを用意しない手法)で膨大な量を学習させ、文章作成における高い性能を獲得したのですが、ChatGPTは人が正解データを用意する「教師あり学習」で強化することで、更なる進化を遂げたモデルです。それにより、抽象度の高い質問に対して回答ができ、質問の内容をわずかに変えるだけで違う回答をする点も優れています。また、回答ができない時は「分からない」と言えるようになったことも新しいポイントです。
その際、同じチャット上で行った質問と回答を記録し、そのデータも利用しながら、回答をすることができるため、チャットが進むにつれて聞きたい情報を聞き出すことができます。
もう一点補足すると、数年前、AIが虚偽や倫理に反する応答をして問題になったことがありましたが、ChatGPTでは、人の手を入れて、大きな虚偽や倫理的問題が発生しないように補正していったのです。コンテンツマーケティングの世界では「ヘルプフル(有益)」「トラスト(信頼できる)」「ハームレス(有害でない)」内容であることが非常に重要なのですが、ChatGPTは、それらの実現に向けて確実に進化していっています。
Chat GPTは「予測モデル」でもあります。従来の「穴埋めモデル」では特定の場所にどのような単語が入るべきかを判断していたわけですが、「予測モデル」では、次にどの単語がくるのが自然なのかを判断していきます。ChatGPTのアウトプットが自然に見えるのは「予測モデル」であることにも起因します。
──なるほど。ChatGPTに質問を入力すると、徐々に応答が返ってきます。少し高級にいうと、言葉を慎重に紡いでいるように見えますが、「予測モデル」であるということを念頭におくと、その挙動がChatGPTの特徴であるということと合致しますね。
ChatGPTでなくなる仕事?
──2013年にオックスフォード大学のカール・ベネディクト・フレイ博士とマイケル・オズボーン教授が発表した論文、「THE FUTURE OF EMPLOYMENT: HOW SUSCEPTIBLE ARE JOBS TO COMPUTERISATION?(雇用の未来:コンピュータで仕事はどう置き換わるのか?)」が、話題になりました。ChatGPTによって、いよいよ、このことが身近になって来た気がしますが、「これからなくなる仕事」については、率直にどうお考えでしょうか?クマベイス田中森士CEO:知識と経験が求められる仕事、クリエイティブな仕事はなくならないと考える人も多いでしょうが、私はそうは思いません。AIの進化を見る限り、今後はクリエイティブな領域にも「なくなる仕事」が入ってくると思います。
フィジカルな接触・経験に基づくもの、医師・教師・取材記者・俳優などはなくならないと思いますが、それ以外の補集合となる仕事には、どんどんAIが進出してくると思います。
かつての「工業化」で見られたように、ピラミッド型の生産工程では、ピラミッドの下の仕事からの置き換えが徐々に進んだわけですが、AIにおいても同じような事象が発生すると考えています。すなわち、今はAIが比較的プリミティブな仕事を置き換えていますが、それが、どんどん上流工程にまで及んでくるイメージです。