子育てをまちに開き、社会を拓く。 代々木公園の「こども園」探訪


保育とまちづくりの「実践」を「研究」につなげて「共創」し、社会を拓く


──まちの保育園・こども園の取り組みは、園とまちだけにとどまらないんですね。

僕らは、東京で5つのまちの保育園・こども園を運営していますが、同時に「まちの研究所」という姉妹会社を通して、学びのネットワークを築いています。

まちの研究所では、東京大学大学院教育学研究科附属発達保育実践政策学センター(Cedep)と発達保育に関する研究を行ったり、レッジョ・エミリアと日本の架け橋になる組織「JIREA」を運営したり、ニューロダイバーシティの学びを深めたり。保育の「実践」から得た知見を「研究」にも生かしています。

保育園の運営費だけでは、先行研究への投資がなかなか難しいので、企業や自治体との「共創」にも取り組んでいます。

たとえば、渋谷区と連携して、渋谷区子育てネウボラ(妊娠・出産・子育て支援)という施設の中に「coしぶや」という新しいかたちの子育て支援センターをつくりました。ここの内装やデザインは良品計画とコラボレーションしています。


(「coしぶや」のアトリエ 写真提供:まちの研究所)


(「coしぶや」のプレイグラウンド 写真提供:まちの研究所)

ほかにも、社会のいろんな主体者が子育て領域に関わってほしいと、企業とのコラボも積極的に行っていまして。博報堂さんとTBSさんと共同で赤坂に事業所内保育所「はなさかす保育園」を開所したり、星野リゾートさんとこれから開業する「リゾナーレ大阪」に旅先での子どもの学びの環境づくりに挑戦したり。実践や研究で培った視点を生かした子どもの学びの環境を社会の中に、共創で増やしていきたいんですね。

保育とまちづくりを「実践」し、そこから得た知見を「研究」に生かし、「共創」で社会に還元していく。実践・研究・共創が循環する生態系をつくりながら、子どもの学びの未来と地域の未来を育んでいきたいと思っています。

──すごい!想像以上に活動の幅が広いですね。「まちの保育園 六本木」のエントランスにはカフェ「まちの本とサンドイッチ」も展開されていますよね。

保育園に遊びに来てください!子どもと関わってください!と声高に言われても、参加しづらいですよね。でもカフェがあれば、珈琲を飲みに来たり本を読みに来たり、気軽に足を運んでもらえる。子どもと関わりたい人、遠くから眺めていたい人、保育園と併設でカフェがあることで「距離感のデザイン」ができるのもいいんですよ。


(まちの本とサンドイッチ外観 写真提供:まちの研究所)


(写真提供:まちの研究所)
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文=徳 瑠里香 撮影=飯塚 朋美

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