──子どもたちとまちの人々、その点と点を結ぶ役割をになっているのが、まちの保育園・こども園独自の「コミュニティコーディネーター(CC)」になるのでしょうか?
そうですね。各園に1名ずついるコミュニティコーディネーターは、保育に専念する先生たちとは違う目線で子どもたちと関わり、親御さん、保育者、地域の人たちとの橋渡しをする存在です。子どもたちの学びの興味に耳を傾けて、地域の人をつなぐこともするし、保護者同士、地域の人同士がつながるサポートもする。地域の人々の想いを汲み取りながら、できることで一緒に課題を前に進めるようなこともあります。
例えば、小竹向原では、町内会の参加率が低下しているという相談を受け、まちの人たちからつくり手を募って一緒にガイドブックを作成しました。創刊時にお祭りを立ち上げ、現在まで継続していたり、そのつながりで新たな動きも巻き起こっています。
賑わいができると人が集まってきて、何かしたいけどどうすればいいかわからない人たちも参加しやすくなる。そうした場やきっかけをつくることで、子どもたちを中心にまちが盛り上がっていくんですね。
──まちぐるみの子育てと、子どもたちとのまちづくりの両輪が回っている状態ですね。
子育ては1/1。一人ひとりの違いを大事にしながら、わけない。
──コミュニティで子育てをするという姿勢は、北イタリアのレッジョ・エミリア市で実践されてきた教育アプローチ「レッジョ・エミリア・アプローチ」にインスピレーションを受けているそうですね。レッジョ・エミリアのどんなところに惹かれているのでしょう?
レッジョ・エミリアは「教育はすべての子どもの権利であり、コミュニティの責任である」という思想のもと、その名を冠する通り、まち全体で保育を行っています。共感する点は、子どもの可能性と創造性、有能さを信じていること。そして大人も子どもも、人が持つ可能性の豊かさをコミュニティの中で引き出していること。さらに教育アプローチが固定化されることなく、対話を繰り返し、成長し続けていること。
レッジョは、コミュニティをベースにしているので、国や地域が違えば、そのアプローチ方法も変わってくるんですね。なのでレッジョの取り組みをそのまま行うのではなく、理念を共有したうえで、僕らは、僕らのまちで、僕らのやり方で保育を探究しています。