その結果は誰と話しているのか、どのレンズを使っているのかによる。
最近、自動運転車の世界では「幻滅期」という忌まわしい言葉が無秩序に飛び交っている。何がきっかけだったのだろう? それはArgo.AI(アルゴAI)の閉鎖だ。数年前までは、自動運転に肯定的な記事を書き連ねたジャーナリストと同じ者たちが、今は自動運転の終焉を声高に叫んでいる。そして、彼らによって事実の混乱は新しい段階に進んでいる。
ノイズとシグナルの比率
否定的な事柄を吹聴する声は後を絶たない。最も著名な否定的意見は、アンソニー・レバンドフスキーの「self-driving cars are going nowhere(行先を見失った自動運転車)」とジョージ・ホッツの「AV’s are a scam(自動運転車は詐欺)」だ。2人とも、自動運転の商用開発の初期に重要な役割を果たした人物で「早く動いて、早く壊せ」というスタートアップ精神を持った気の早いパイオニアだ。だが、現在この業界には、自動運転車の世界に深く関わり実際に何が起こっているのかについて深い知識を持った何千人もの人々がいる。それゆえに私は、先の2人だけがあたかも「極めつけの権威」であるかのように、主要なメディアが引用していることに驚きを隠せない。もちろん彼ら2人にも意見をいう権利はあるが、知名度が高いためか、元記事から大量に、まるで「先生」の意見であるかのように引用が行われている。
薄弱な証拠に基づいた否定的なメディアの主張のもう1つの例を挙げよう。Crunchbase News(クランチベース・ニュース)は、Crunchbaseのデータを基に6つの自動運転車スタートアップを分析した「Highway to Broke(行き止まりのハイウェイ)」と題する記事を掲載した。だがその中で分析された例のうちの2つは数年前のもので、当時はまったく情勢が異なっていたことを考えると、現在では関係がない。また別の例の1つは、トラックの隊列走行に関するもので、ユニークなユースケースであるが故に、その見通しを業界全体のコメントに広げることはできない。最新事情と呼べるのは3つだけで、いずれもトラック輸送に特化したものだった。
この3つのうちの1つであるTuSimple(トゥーシンプル)は、市場原理とは無関係の内紛という点で、独自の事情を抱えている。