結局、この記事の中で、今日の自動運転車業界(少なくともトラックの世界)の将来を占う素材として使える可能性のある例は、Kodiak(コディアック)とAurora(オーロラ)だけだった。Kodiakの議論では、肯定的なものであれ、否定的なものであれ、具体的な指摘はされていない。Auroraに関する議論は、株価のパフォーマンスの悪さについて終始している。両社は、他の同業他社と同様、不確実性を抱えながらも大きな強みを持っている。私がいいたいのは「Highway to Broke」というタイトルの記事が、扱った6社のうちの2社だけが現在の動きに多少なりとも関係しているのに過ぎないのに、自動運転車分野全体を何らかのかたちで総括しようとしたということだ。これもまた大袈裟な見出しと言えるだろう。
Argoのストーリーから生まれた、すべてを変える小さなディテール
Argoの閉鎖に関する報道では、同社の都市部向け自動運転車両の開発とテストの中止が強調された。ArgoはCruise(クルーズ)やWaymo(ウェイモ)と同じゲームに参入しようとしていたが、これはそもそも無理難題であり、出遅れていたのだ。
Argoのオーナーであるフォードとフォルクスワーゲン(それぞれ2017年と2020年に投資を行った)は、Argoチームが生み出した膨大なノウハウを活用し、先進運転支援システム(ADAS)に軸足を移すことにした。これは特に目新しい話ではない。大手ハイテク自動車会社のほとんどは、数年前に個人用自動車の完全自動運転から撤退しているのだ。ドライバーが、運転を完全に車両に任せながらも、必要があれば再び運転することができるようにするSAEレベル3機能は、2021年にホンダとメルセデスが導入し、続いて2022年にBMWとボルボが導入した。フォードとフォルクスワーゲンは、Argoの専門知識を社内に取り込んで従来の市場に回帰し、ADASの競争力を大幅に高めた。
Alliance for Automotive Innovation(自動車イノベーション同盟)のCEOであるジョン・ボゼラは、11月に発表した「Keep Calm... and Ride On: AV Technology is Hard But it’s Here to Stay(落ち着け、そして待て。自動運転車テクノロジーは難しいが今後も続く)」という記事の中で、ジャーナリストによる過剰反応を「茶番劇」と呼んだ。自動運転車の現状に対する彼の見通しは「先行きは明るい」というものだ。