ファストファッションブランドやパフォーマンスアパレルのメーカーが使う素材はポリエステルといった石油由来のものです。もちろん、化学繊維は人類の進化に大いに貢献してきましたが、これは石油を大量に使います。じゃあ、ナチュラルな本革を使えばいいかというと、倫理的な課題もあります。そこでフェイクレザーが出てきましたが、これもまた石油由来のものです。
Allbirdsの製品にはナチュラル・ファイバー・ウェールディングの人工皮革を使うモデルがあります。この人工皮革を植物由来のナチュラルなもので生産することができます。製品はとても柔らかく、履き心地も良く、革にしか見えない。パフォーマンスアパレルの素材も、このピュアナチュラルコットンで代替できるため、今後成長も見込めます。
実際、Allbirdsの他にもポロ・ラルフローレンやBMWも同社に出資している。ポロ・ラルフローレンの場合は、ポリエステルを使っているポロシャツを、すべてピュアナチュラルコットンに切り替えたいという理由からです。
スクラムベンチャーズではCO2を削減する、またはCO2排出枠を獲得できるようにするようなスタートアップへも幅広く投資しています。「クリーンテック」とも呼ばれた「クライメートテック(Climate Tech)」は難しいといわれることもありますが、人類の存亡がかかっています。取り組む意義はとても大きい。
次の時代のフロンティア
──「マルチバース」とはどのような取り組みのことを指すのですか?
宇宙を視野に入れた取り組みのことです。地球がなくなる、あるいは人が住めなくなることを見越して「他の星へ『ユニバース』を広げよう」ということですね。イーロン・マスクやジェフ・ベゾスが宇宙を目指していることは、よく知られています。
イーロン・マスクの場合、航空宇宙メーカー「スペースX」を立ち上げており、重力の低い月を足がかりにして、火星への有人飛行を行い、その後、火星へ人類の移住を進めるとしています。また中国も独自の宇宙ステーション「天宮」を始動させたことから、宇宙開発に真剣に取り組んでいることがわかります。
地球に人が住めなくなっても、宇宙に住めるように、アナザープラネットを目指す取り組みが行われているといます。
この30年で、デジタルが急激に進化し、さまざま変化が一機に起こりましたが、その一方で、地球は急激に壊れかけています。今後10年というスパンで考えると、これら3つの「バース」はこれからのフロンティアになります。そのため、私たちはこれらに取り組むスタートアップへ投資していますし、成り行きを注視しているところです。