菅元首相の「カーボンニュートラル宣言」、なぜ?
また、京都議定書では国連からトップダウンで、それぞれの国に対して「日本は6%減らしなさい」「アメリカは7%」「EUは8%」などと指示を出したの対し、パリ協定では「各国がこの目標に対してどうするかのシナリオをたて、それを5年おきに国連に対してレポートしてください」という方法での合意形成がされました。パリ協定がきっかけで、先進国を中心に世界全体が、カーボンニュートラル実現に向けて大きく傾いていったんです。
その後、2019年にはトランプ大統領が「アメリカファースト」と言ってアメリカがいったん抜けたものの、その後、バイデン大統領になってから復帰、という一幕もありましたね。
日本にカメラを向ければ、パリ協定から遅れること5年、2020年に、菅首相が所信演説で突然「カーボンニュートラル宣言」をしました。「日本はまだ先だろう」と思っていた日本企業は驚いたものの、経産省の「グリーン成長戦略」などもあり、官民一緒に進めていかざるを得ない状況になりました。現在「グリーン戦略」や「グリーンエネルギー」など「グリーン」がつく言葉が国内でよく使われるようになったのは、この時の動きが起源と言っていいでしょう。
実は菅元首相がこの演説をする1カ月前、中国の習近平国家主席が「2060年までに排出をゼロにする」と宣言していたんですね。菅さんも首相就任のタイミングで、それより早い「2050年までに」と言って世界の注目を集めたい、という目的があったのでは、という見方もあります。
実際、世界各国から反響があり、「中国も日本もやっとやる気になった」「新しい日本のリーダーはなかなかやる」といった評価を得ることにもなりました。本当のところはわかりませんが、環境問題が、各国政治の思惑が深く絡まざるを得ないテーマであることは確かだと思います。
日本の企業はどうやってカーボンをマネジメントしている?
では具体的に、日本の企業はどうやってCO2排出を減らしているのでしょうか。
そもそもCO2の排出量の算定方法には、大きく分けて「SCOPE1」「2」「3」があります。
「SCOPE1」は直接排出。工場を持っている企業なら、「工場で出しているCO2量」です。
「SCOPE2」は間接排出。企業活動の上で「電力や熱を使用したために排出したCO2量」です。
そして「SCOPE3」はそれ以外の全部です。
学校でいえば、「SCOPE1」はありませんが、授業中の教室内の照明など、電気は使っているので「SCOPE2」はありますね。
それでは「SCOPE3」は何かというと、青稜中学校に先生が出勤するために電車に乗ったり、出張で飛行機に乗ったりするときのCO2排出量が該当します。また、たとえば椅子を買った場合、メーカーが椅子を作る時に排出したCO2や、トラックでその椅子を運送する際に排出したCO2などまでも含まれます。
ここまで説明するとわかってもらえるでしょうか?
自社で努力して限りなくゼロまで減らせるのはSCOPE1と2まで。でも、社員の移動や取引先のCO2排出まではコントロールできないので、SCOPE3をゼロにすることは不可能に近い。
じゃあどうすればカーボンニュートラルが実現できるのか?