21世紀注目のビジネス、「カーボンクレジット」
そこで、「カーボンオフセット」という概念が登場します。この言葉を聞いたことがある人はいますか?
──(全員、うなづく)
どうしても削減できないCO2の排出量を、お金を払い、株のように権利を買って相殺することですよね。
たとえば森林はCO2をたくさん吸収しているので、森林を持っている会社から「CO2を排出する権利=カーボンクレジット」を買い、どうしても削減できなかったCO2排出量を減らす、という仕組みです。
この「カーボンクレジット」が現在世界で注目のビジネスになっています。これにも2種類あります。それは、「政府主導型」と「民間主導型」です。
たとえば日本にも「J-クレジット」という政府主導型の制度がありますが、世界的には近年、民間が主導しているボランタリークレジットが注目されています。
マイクロソフトはゼロでなくマイナス、「カーボンネガティブ」を宣言
マイクロソフトの脱炭素経営計画が、世界的にとても有名です。それは、2030年までに、CO2排出量をゼロではなくマイナスにすると宣言したためです。これを「カーボンネガティブ」と言います。
カーボンオフセットの仕組みを活用して、排出する量よりも、吸収される方が多い状態を作るわけです。日本ではなかなかそこまでやっている企業はありませんが、このように、海外の「一流」と呼ばれるような企業は、カーボンオフセットの仕組みを使ってカーボン「ネガティブ」さえ目指すような時代に入っているのですね。
──パリ協定は発展途上国の国々も参加していますが、ほとんど二酸化炭素は先進国が排出しているのではないでしょうか。発展途上国は経済水準を上げるのに必死なのに、二酸化炭素を出すなと押さえつけた場合、「日本製品の不買運動」とかにつながりませんか?
パリ協定は、各国が自主的に努力目標を立てているので、そうはならないのです。
中国やインドなどは別として、そんなにCO2も出してない、まだ貧しい国や小国は「自分達ができる範囲で」自主的に目標を設定して取り組めばいい。実際、カーボンニュートラルを宣言をしていない国もあり、各国がそれぞれ考えて策定しているのです。
逆に日本などは最初、「80%削減」と言っていたのに、100%にアップグレードしました。EUは、「2035年までに、全新車ゼロエミッションを義務化」などと言っています。京都議定書の際のようなトップダウンではないので、そこはあまり問題にならないのかな、と思いますね。
後編:中学生が電通マンに「脱炭素化しないと日本経済はなぜピンチか」を聞いてみた に続く