ビジネス

2022.12.21

4000万人利用の「note」 個人に課金する消費行動はどう作られたか

代表取締役CEOの加藤貞顕(撮影=曽川拓哉)


ターニングポイント2 街の雰囲気を決める


まず行ったのは「cakes」の立ち上げだった。2012年に開始したcakesは、月単位で課金すると全コンテンツの購読ができるサービス。noteと違うのは、選ばれたプロのクリエイターのみが作品を掲載するという点だ。

「誰でも書けて、価格も自由に設定できる。そんな場所を作ろうということは決めていました。

でもその場所の方向性が決まらないと、書き手は何を創作すればいいかわからない。だから最初はプロを集めたんです。街の住人の雰囲気を決めるっていうのかな」

加藤貞顕

実際にcakesは2022年8月に終了し、現在はnoteにリソースを集中させている。cakesを失敗と捉える声もあったが、「プラットフォーム一本化は、創業期から決めていたこと」だという。

noteは2014年にリリース。初期は、新たなブログサービスのイメージが強かったが、個人がコンテンツを販売できる機能が注目を集め、徐々にユーザーが拡大していった。

「左ききのエレン」「ビジネスモデル図鑑」などヒット作品が数々生まれ、新たなクリエイターも輩出している。

ターニングポイント3 CXO加入で、続ける仕組みを構築


noteには現在、約2800万件のコンテンツが公開されている。上位1000人のクリエイターが年間に稼ぐ金額は平均663万円と、創作で生活ができる人も増えてきた。

その巨大なプラットフォームを支える一人が、2017年に加入したCXOの深津貴之(ふかつ・たかゆき)。XはExprerience、つまりユーザー体験の最高責任者だ。

深津は入社すると、MVV(ミッション・ビジョン・バリュー)の制定にあたった。

当時のnoteは、クリエイターたちのコンテンツを埋もれさせずに書き続けてもらうための仕組みや、それと同時に、増えていく社員の目線を統一することが求められていた時期だったという。

深津は社内のワークショップを経て「だれもが創作をはじめ、続けられるようにする」をミッションに制定し、新たな行動指針を社内に提示。その後もMVVの社内共有会を実施するなど、全社的な意思統一を図っている。

改めて明文化されたミッションをもとに、noteはクリエイターが活動を続けるための仕組みとして、現在も行われているコンテスト、出版社やテレビ局とのコラボによる書籍化・映像化を加速させた。

「著名人がファンクラブのように使ったり、ライターが取材費をサポート機能で稼ぐとか、音楽を販売するなんていう活用法も出てきました。多様性ある使い方が増え、少しずつ目指す街に近づいて来たと思います」

しかし加藤は、まだ「圧倒的な人口」が足りないと考えている。
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取材・文=井澤梓 編集=露原直人 撮影=曽川拓哉

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