連星の新星爆発をマルチスペクトルマップで分析する天文学者チーム

連星系、へびつかい座RS星の爆発の電波強度図とVLT干渉計測定値(ESO)

直近の爆発から1年あまりが過ぎた現在、天文学者の国際グループが、活動中の超新星に関するこれまでで最も詳細なマルチスペクトルマップを完成させた。へびつかい座RS星(RS Ophiuchi)の2021年8月に起きた熱核反応爆発の残骸である連星系が、超高エネルギーガンマ線に至る広範な電波スペクトルを用いて徹底的に観測された。

通常、肉眼で見える100分の1程度の輝度しかないへびつかい座RS星は、天の川銀河で数例しか知られていない稀な回帰新星の1つだと米天文学会(AAS)はいう。

より破壊的な超新星とは異なり、新星の爆発は連星系の白色矮星の残骸が、自らが膨張させた相棒である赤色巨星の大気から十分な物質を取り込み、表面で核融合を引き起こしたときに起きるとAASは説明している。これが次に、太陽1年分の1000倍のエネルギーを、わずか数日のうちに解放する。

へびつかい座RS星の場合、連星の2つの要素(恒星残骸である白色矮星コアと赤色巨星)はわずか1.48天文単位(地球から太陽までの距離の約1.5倍)しか離れていない。これは、白色矮星が膨張する赤色巨星の表面から、継続的に物質を取り込むのに十分な近さだ。

へびつかい座RS星が回帰新星であると知られているのは、10~20年くらいの時間軸で通常より最大1000倍明るく燃え上がるところが継続的に観測されているためだ。約5000光年離れたへびつかい座にあるRS星は、1898年に初めて爆発を観測された。直近2回の爆発は2006年と2021年に起きた。

「2021年の爆発から1年以上経ったいまも、私たちはこの恒星から放出された物質が膨張するところを追跡しています」と英国ジョドレルバンク天文台の副部長ティム・オプライエンはいう。

オブライエンらと同僚らは、現在も直径76メートルのラヴェル電波望遠鏡を使って、2021年夏に起きたへびつかい座RS星の熱核反応爆発の残骸からやってくる電波放射を観測している。

「私たちはここにある望遠鏡と、英国およびヨーロッパ全体にある他の望遠鏡ネットワークを使って、拡大する爆発から放出された物質の電波画像を作成しています」とマンチェスター大学の天体物理学者であるオブライエンはいう。「この物質が赤色矮星の風を突き進み、粒子を光速近くまで加速するところを見ることができます。その結果、連星系の軌道面の上や下で反対方向に、大量の電波放射が放出されているように見える」
次ページ > 白色矮星表面に蓄積されたガスはどうやって核融合を生み出すのか?

翻訳=高橋信夫

タグ:

ForbesBrandVoice

人気記事