「地球の生命は何度も誕生した可能性がある」と宇宙生物学者が指摘

地球の向こう側から昇る太陽(Getty Images)

惑星科学界の主流は地球外生命の探索に取り憑かれるあまり、自分たちの惑星でどのように生命が誕生したかをほとんど知らないことを忘れてしまいがちだ。

そもそも宇宙生物学とは、別の星を回っている惑星や、木星や土星の月で生命を見つけることだけではなく、私たち自身の惑星でどのように微生物が始まったのかを理解することでもあるのだ。なぜここでそれが起きたのか? 生命が誕生するのに必要な化学物質を地球に持ち込んだ隕石の助けは必要だったのか?

そして、地球における生命の誕生は一度ならず起きたのか? そして、それはこの惑星全体でほぼ同じ時期に起きたのか?

著名な宇宙生物学者の少なくとも1人は、最後の2つの質問の答えがイエスである可能性があると考えている。

地球で生命がどうやって誕生したのか、まだわかっていないとポルトガルのInstituto Superior Tecnicoの宇宙生物学者ジータ・マーティンスがリスボンにある彼女のオフィスで私にいった。しかし、この前生物化学、すなわち生命が生まれる直前に何が起きたのかの全体像を知るためのパズルのピースはわずかしか見つかっていない、私たちの太陽系が始まったときの化学、地質学、物理学については多くのことがわかっていて、それは彼女が25年前に研究を始めたときにはなかった重要な情報であると彼女はいう。

生命は地球ができてから200万年以内に誕生したかもしれない。そして、生命の最古の証拠は少なくとも30~50億年前に遡る。

それはどうやって起きたのか?


細胞生物を構成している有機分子の多くが、隕石や小惑星や彗星に存在しているとマーティンスはいう。そしてその有機物が地球の歴史の早い時期に地球に持ち込まれたと彼女はいう。しかし、それらの同じ衝突が、生命が進化することのできる局所的な亀裂を作り生命の始まりを手助けした可能性もある。

10年近く前、マーティンスと英国ケント大学の同僚たちは、惑星表面への彗星の衝突をシミュレートした。衝突は膨大なエネルギーを生み出すため、発生したエネルギーはどこかへ行く必要があるとマーティンスはいう。そして、その衝撃エネルギーは分子結合を切断してより複雑な分子を作るのに十分であったことは明らかだとのこと。



地球がその表面に液体の水を保持できるまで冷却したとき、私たちの惑星は生命の誕生が可能になる重大な局面を迎えたとマーティンスはいう。さらに彼女は、微生物生命が地球上の2カ所以上で同時に進化した可能性もあるともいう。

しかしマーティンスは、初期の原始太陽系星雲の化学の全体像を把握することも、地球最初の生命の進化につながった分子成分の供給源を理解するために重要であると指摘する。そして彼女と同僚たちが隕石や彗星や小惑星の中で次々と見つけた分子化学の驚くべき豊富さを何度も繰り返して強調した。

私たちの太陽系が形成される元となった気体や塵の成り立ちを垣間見ることも、どんな種類の星間化学がこの太陽系の最初の化学的成分に寄与したかのヒントを得るために重要だ。
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翻訳=高橋信夫

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