NASAの小惑星探査機ルーシーが見た「満地球」

NASAの探査機ルーシーはこの地球の画像(トリミング済み)を地球から62万キロメートルの距離で行われた機器校正手順の一環として撮影した(NASA/GODDARD/SWRI)

NASAの小惑星探査機、Lucy(ルーシー)が先週、地球を超接近通過した後、驚きの画像の数々が送られてきた。

この4億5000万ドル(約667億円)の「ディスカバリー」クラスの探査機は、東海岸時間2022年10月16日午前7時4分、地球の上空わずか350キロメートルの大気をかすめ飛んだ。

ルーシーが向かっているのは、太陽を周回するTrojan(トロヤ)群。「木星の子どもたち」とも呼ばれるトロヤ小惑星群は、2つの群れが木星の前方を行き、1つが後から追いかけている。トロヤ群は、惑星や太陽系の形成と進化の過程で生まれた太古の残骸、化石だと考えられている。

Earth and Moon
2022年10月13日、NASAの探査機ルーシーが140万キロメートルの距離から撮影(NASA/GODDARD/SWRI)


3回の地球接近飛行の1回目は、12年にわたる長期ミッションのための軌道エネルギーを得るためのもので、先週末ルーシーは太陽の方向から地球に接近した。このため、宇宙船は満月と「満」地球の画像を撮影することができた。

これらの画像は、宇宙船のカメラや機器の校正に使われるが、今回の月の画像は特にミッション科学者たちの興味を引いた。

ルーシーは2年以内に小惑星帯を通過し、小惑星ドナルドジョハンソンとトロヤ群の4つの小惑星であるユーリパテスとその衛星ケータ、ポリメレとまだ名前のないその衛星、リュークスおよびオラスを訪れる前に、2回目のフライバイに戻ってくる予定だ。2030年の3回目のフライバイでは、ルーシーをトロヤ群の後方にある二重小惑星、パトロクロスとメノイティオスに方向転換する。

Lucy
2022年10月16日にイタリアのジャンルカ・マシ仮想望遠鏡プロジェクトが撮影した、地球フライバイ12時間後の探査機ルーシー。同望遠鏡はルーシーの視運動(地球から見た見かけの運動)を追跡する。星が短い軌跡のように見えるのに対して、探査機が鮮明な光の点なのはそのためだ(GIANLUCA MASI/VIRTUAL TELESCOPE PROJECT)

NASAのこの探査機が訪れる小惑星を含む小惑星帯は、1974年にエチオピアで320万年前の化石化した人類の祖先を発見したドナルド・ジョハンソンにちなんで、(52246)ドナルドジョハンソン(ドナルドヨハンソンとも)と名づけられた。彼はその夜キャンプで、ビートルズの楽曲『ルーシー・イン・ザ・スカイ・ウィズ・ダイアモンズ』の入ったカセットを聞いていたことからその化石をルーシーと名づけた。

NASAの宇宙探査機の名前はその化石からつけられ、化石が発見された地域は最新画像の中に見ることができる。本稿の先頭の画像の左上に、ルーシーが発見されたエチオピアのハダール地方が見える。この画像はルーシーに搭載されたターミナル・トラッキング・カメラ(T2CAM)システムで撮影された。

ルーシーはこのミッションで太陽を6周するが、最終的には、トロヤ小惑星と地球の軌道の間を数百万年間回り続ける。つまり、ルーシーは私たちの子孫のためのメッセージを入れたタイムカプセルを運んでいる。未来の人類がルーシーを回収し、それが人類による太陽系探査の第一歩を踏み出した日々の人工物であることを発見することが期待されている。

次回の地球接近飛行は2024年後半だ。

澄み切った空と大きな瞳に願いを込めて。

forbes.com 原文

翻訳=高橋信夫

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