先にThe Astrophysical Journal Lettersに掲載された論文で、著者らは地球の生命や太陽に似た別の恒星を周回する地球型惑星にいるかもしれない生命は、太陽の磁気が相対的に静穏な状態に移行したことの恩恵を受けた可能性があると主張している。
「私たちは、この磁気転移が起きた時代は太陽類似星の誕生から26~37億年の間であることを突き止めました」と論文の筆頭著者でコロラド州ゴールデンのWhite Dwarf Research Corporationの天文学者トラビス・メトカーフはいう。
これは太陽が磁気的に静穏な状態へ移行したのが、地球の生命が海から陸地へと進出したのとほぼ同じ時期だったことを裏づけるものだと彼はいう。つまり、複雑な生命を探すのに最適な場所は寿命の後半にある恒星かもしれないことを示唆している。
メトカーフらは論文の中で、アリゾナ州にある大双眼望遠鏡(Large Binocular Telescope / LBT)で行われたいくつかの太陽類似星の分光観測について詳しく述べている。目的は、星の光の偏光から大規模磁場の存在を0.01%の精度で測定し範囲を限定することだと著者らは述べている。
この恒星の変遷を説明するために、研究チームは「magnetic braking(磁気ブレーキ)」として知られるプロセスを挙げた。
磁場は太陽類似星の表面付近の沸騰運動(対流)と自転との相互作用によって生まれ、その機構は恒星ダイナモと呼ばれている、とメトカーフはいう。しかし太陽類似星の自転速度は、恒星風と磁場の間に起きる相互作用のために時間とともに減衰するという。
恒星は、その表面から絶え間なく物質を送り出している。しかし、この物質は電荷を帯びているため、磁力線に沿って磁場が影響を与えるには磁力が弱すぎる距離まで移動する。そこで物質は実質的に磁場から自由になり、恒星の角運動量の一部を持ち去ることで、徐々に恒星の自転を遅くしていく。「磁気ブレーキ」と呼ばれるこの現象は、アイススケート選手が両腕を伸ばして回転を減速するのと似ている。