【対談】福武英明×内藤礼 幸せの定義を拡張する「人×自然×アート」の可能性

内藤礼《母型》2010年 豊島美術館、豊島・香川(写真/森川昇)



豊島美術館、豊島・香川(写真/鈴木研一)

福武:豊島美術館は、訪れるごとに異なる鑑賞体験を味わえる。むしろ鑑賞でもなく、体験でもなく、思索に誘導されているような。ミニマルな空間の中で、空っぽのようにも感じるが、圧倒的な変数の自然の要素も絶え間なく入ってくる。鳥の声、水の動き、他人が入ってきてもノイズに感じない。あれは何なんでしょうか?

内藤:「自然の内部にいて、自然と連続している」という感じではないでしょうか。大自然の中にいると、恐らく圧倒的すぎて感じることを抑制している気がする。一度人が受けとることを経過すると感じることができる、そういうところがあると思います。

福武:そういった新しい人と自然の関係性に、とても興味があります。環境保全や自然保護といった観点だけではなく、100年後、1000年後、次の人類に、どのような自然を創造し、受け渡していくのか。そこに人がアートというかたちで介在することに、可能性や希望を感じますし、取り組んでいきたいと思います。


福武英明◎福武財団副理事長・代表理事、ベネッセホールディングス取締役。ニュージーランドの資産管理会社efu Investment代表。当地で複数の企業を経営。ベネッセアートサイト直島のプロジェクトには初期から携わり、企業活動のベネフィットを文化・芸術活動に資する仕組みづくりとその実行を担う。2023年、總一郎氏に代わり新理事長に就任予定。

内藤 礼◎アーティスト。空気と水、光など自然の要素や特性を生かし、空間全体を満たすような作品を手がける。1991年、佐賀町エキジビット・スペースで発表した「地上にひとつの場所を」で注目を集め、97年のベネチア・ビエンナーレ国際美術展の日本館で同作品を展示。毎日芸術賞(2018年)、芸術選奨文部科学大臣賞(美術部門、2019年)など受賞多数。

※本記事は、Forbes JAPAN 2023年2月号掲載の記事に一部修正・加筆したものです。本誌冒頭の「先に逝った人への眼差し」は「先に逝った人からの眼差し」が正しい表現でした。慎んで訂正・お詫びさせていただきます。

編集=岩坪文子、荒川未緒

この記事は 「Forbes JAPAN No.102 2023年2月号(2022/12/23発売)」に掲載されています。 定期購読はこちら >>

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