日揮グループは、なぜ培養肉に挑むのか 「オルガノイドファーム」の原動力

日揮 未来戦略室 担当マネージャー/オルガノイドファーム 代表取締役の山木 多恵子氏


出村:日揮さんがこれまでに培ったエンジニアリングの技術も活かしているとのことでしたが、具体的にはどのあたりになるのでしょうか?

山木:この細胞培養の技術は、すでに医薬品の製造などに使われています。日揮はプラントの会社なので、そういった医薬品の製造プラントや大型の細胞培養設備をつくるノウハウや知見を多く持っており、研究に活かされています。

培養肉の技術自体は、まだ試験管内やシャーレの上で実験している段階です。私たちが妄想している培養肉の生産プラントは、巨大なタンクが並び、鳥や牛や豚の各部位がタンクの中で大量に培養され、完全無人でリモートコントロールできるようなもの。これらの実現に、日揮の技術力が大きく貢献できるのではないかと想像しています。

出村:確かにそこは日揮さんの強みというか、大企業ならではのスケール感で取り組めるところですね。

山木:普通だったら小さめのパイロット装置をつくって少しづつ拡大していって、という流れだと思うのですが、それは時間もコストも膨大にかかります。私たちの理想とする最終的な商業プラントのイメージ設計はすでに持っているので、よりスムーズにスケールアップしていくために研究開発の段階から事業に参入した背景がありますね。


オルガノイドファームはブランディングに力を入れている。ロゴが入ったメンバー専用の白衣もデザインした

誰でも培養肉屋さんに?


出村:今後、どのようにビジネスにされようとしていますか?オルガノイドファームが小売りもしていくのでしょうか?

山木:日揮グループの得意領域は生産プロセスの最適化の部分なので、「どういうお肉のどういう部位をどのくらいつくりたいんです」といった企業やお客さんのオーダーに対して、こういうプロセスで生産したらこんな製品が安く安全にできますよ、という「プラントの設計」でお手伝いしていくビジネスができればいいなと考えています。

最初はやはり自分たちで試作品をつくっていく必要があると思いますが、最終的にはそういったサービス自体を提供できる形を目指していきたいです。

出村:つまりプラントという巨大なハードな部分と、そこで活用できる培養肉レシピみたいなものをセットで提供するということですね。例えば僕が資金を集めて10年後ぐらいに一念発起すれば培養肉屋さんになれるかもしれないということですか?

山木:なれます。私たちが培養肉のレシピと装置を提供しますので。

出村:「僕のこだわりはちょっと濃いめの味つけでいきたいんですよね」みたいなご相談も可能なんでしょうか?

山木:はい、脂っぽいのがいいんですけど、とか赤身っぽいのがいいんですけど、とかにも対応していきます。
次ページ > これからぶつかりそうな壁は?

文=出村光世 撮影協力=ARCH 虎ノ門ヒルズインキュベーションセンター

タグ:

ForbesBrandVoice

人気記事