日揮グループは、なぜ培養肉に挑むのか 「オルガノイドファーム」の原動力

日揮 未来戦略室 担当マネージャー/オルガノイドファーム 代表取締役の山木 多恵子氏

世界的な人口の急増が確実視される未来。それに比例した食肉消費量の増加は人類が抱える大きなイシューのひとつだ。

その解決策として注目を集めているのが、動物細胞を培養して食肉を生産するクリーンミート、「培養肉」だ。国内外の研究機関やスタートアップが、より効率的かつ再現度の高い“味の培養”を推し進めている。

そんな培養肉事業に新規参入したのが、総合エンジニアリング企業としてエネルギーの分野をはじめとした様々な事業を手がける日揮グループの新会社「オルガノイドファーム」だ。

日揮グループがなぜ今、培養肉に着手するのだろうか。2021年の設立と同時に同社代表取締役に就任した山木 多恵子氏に、筆者(出村)が話を聞いた。

「培養肉」をつくる理由


出村:なぜ今、世界で培養肉が必要とされているのでしょうか?

山木:まず一つが世界的な人口増加ですね。2050年に97億人に達すると言われており、100億人を越えるのもそう遠くはありません。それに加えて、お肉を食べる人の割合が世界的に増えているというデータもあります。今までお肉を食べる文化がなかった国の人々も口にするようになってきており、人口増加と合わせて食肉需要がどんどんと増しているのです。



「じゃあお肉をたくさんつくればいいじゃん」と思うかもしれませんが、環境問題の観点でそうもいきません。畜産で牛や豚などを育てる過程で温室効果ガスが大量に排出されるのが問題になっています。世界の温室効果ガス排出量で畜産が占める割合は全体の14%、これは飛行機や車など交通機関から排出される量とほぼ同じだと言われてます。

また、畜産で必要となる土地面積や水資源の問題もあります。飼料生産も考慮すると、地球上の農地の75%は畜産用とされており、また食肉1kgを生産するために大豆の約6倍の水が必要となります。そのため、このような観点からも畜産を拡大するという未来の選択がしづらくなってきています。



人も増えて需要も増えるけれど今まで通りのお肉の生産が難しいとなったときに、お肉の代わりのものをつくろう、もしくは違う方法でつくろうという流れが生まれました。そのひとつが植物由来の代替肉、大豆ミートなどと呼ばれているものですね。
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文=出村光世 撮影協力=ARCH 虎ノ門ヒルズインキュベーションセンター

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