日揮グループは、なぜ培養肉に挑むのか 「オルガノイドファーム」の原動力

日揮 未来戦略室 担当マネージャー/オルガノイドファーム 代表取締役の山木 多恵子氏


出村:いいですね。最初にお話ししたような畜産にまつわるイシューに心を動かされた人が起業するためのサポートにもなりますし、企業が新たなESGへの投資の一環として共創できる可能性もあるということですよね。これからぶつかりそうなハードルはありますか?

山木:まだ少量しか生産できず、それに対して価格が高いなど、商用化のための技術的な課題がたくさんありますね。あとはスケールできてプラントを実現したとしても、培養肉を食べること自体を消費者さんに選んでもらえるかはすごく大きな課題になってくると思っています。

特に日本人は食の安全に対する意識がすごく高い。一方で食文化が広いのも特徴ではあるので、味はもちろん、培養肉が安全で美味しいものですよと魅力的に伝えていく部分でブランディングの力がさらに必要になっていくのかなと思います。

出村:技術を磨き切っても需要を喚起できないと、っていうところは最終的な壁としてありそうですね。こんなレストランがあったら行ってみたいよね、と未来をビジュアライズして発信してみるのも良さそうです。

最後に、どんなコラボレーションがあると、さらにオルガノイドファームが進化していきそうですか?

山木:親会社の日揮によるプラント装置の強力なバックアップがあり、また、オルガノイド技術の第一人者である横浜市立大学・武部貴則教授、幹細胞の研究者の順天堂大学・赤澤智教授という心強いアカデミアのサイエンティストも揃っています。

ですのでその先の「食べ物としてどうすれば美味しいと感じられるか」や「味や食感のデザイン」で協力いただける専門家や食品会社の方と今後コラボレーションしていきたいですね。




山木 多恵子◎日揮未来戦略室 担当マネージャー/オルガノイドファーム 代表取締役。大学院修了後、日揮に入社。石油ガス精製プラントの設計を担当し、国内外の複数のプロジェクトに従事。その後、新規事業部門に異動し、培養食料のコンセプトとプラント事業に親和性を感じ培養肉事業の推進に奔走。2021年社内ベンチャーとしてオルガノイドファームを設立し代表取締役に就任。

オルガノイドファーム
国内EPC事業会社である日揮が、動物細胞を培養して食肉を生産するクリーンミート(培養肉)の商業生産を目指し技術開発を行う新会社として設立。当社グループが医薬品分野を通じて培ってきた細胞培養関連技術や大規模生産を可能とする工程の自動化・効率化などのエンジニアリング技術力を駆使し、栄養改善などを実現する高機能・高付加価値なクリーンミート生産技術の確立を目指す。2030年に商業プラントの運転開始を予定している。

文=出村光世 撮影協力=ARCH 虎ノ門ヒルズインキュベーションセンター

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