後期中新世のサメの大好物は「マッコウクジラの鼻部」

マッコウクジラの化石には、さまざまな生態学的多様性の証拠が残されている(Getty Images)


マッコウクジラは、鼻が体長と体重の3分の1近くを占めていることでよく知られている。それが彼らに驚くべき嗅覚を与えていると思うかもしれないが、すべてのハクジラ類は嗅球をもたない。代わりに頭部は鯨蝋で満たされ、その驚くべき共鳴能力が、音響定位(echolocation、マッコウクジラ以外にもいくつかの動物が使用している生物学的ソーナー)によって獲物を見つけることを可能にしている。彼らは食料を探して海深く潜り、高周波音を発信し、物体に当たって戻ってきた反響から物体(獲物)の位置を知ることができる。それはマッコウクジラが獲物を捕まえるためには不可欠であるとともに、彼ら自身を獲物にしているものでもある。マッコウクジラの肥大化して脂質に富んだ前頭部は、脂質を主要な代謝エネルギー源としているサメにとって理想的な標的だ。


メガロドンは、古代のマッコウクジラに残された噛み跡の犯人である可能性が高い(Getty Images)

「前頭部の主要な臓器は、油脂に富んだ組織である鯨蝋とメロン体ですが、顔の筋肉によっても強く制御されています」と論文主著者で、チューリッヒ大学の古生物学者アルド・ベナイツ=パロミノは説明する。「噛み跡の大部分は顎、目の周辺などこれらの軟組織に隣接する骨で見つかっており、サメがこの部分を積極的に狙っていたことを示しています」

噛み跡はさまざまあり、複数種類のサメ類がこのごちそうを楽しんでいたことを示している。一部は、恐れられていた巨大古代サメであるメガロドンのものと思われるが、他の噛み跡はより現代のサメに近い。しかし、中新世にはヒゲクジラ類もいたのに、なぜサメはマッコウクジラを狙ったのか。「中新世のヒゲクジラが小さかったのに対して、マッコウクジラは肥大化して脂質に富んだ鼻部のおかげで理想的な脂肪備蓄場所になっていました」とベナイツ=パロミノはいう。「同じような噛み跡のパターンは、世界中で発見された他の中新世マッコウクジラの化石でも発見されていることから、サメはマッコウクジラを脂肪源として積極的に利用していたと考えられます」

forbes.com 原文

翻訳=高橋信夫

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