後期中新世のサメの大好物は「マッコウクジラの鼻部」

マッコウクジラの化石には、さまざまな生態学的多様性の証拠が残されている(Getty Images)

太古の昔から続く戦いだ。巨大な海洋哺乳類対古代モンスターのサメ。このサメとクジラの栄養相互作用は古代に遡り、世界中の研究者が発見した化石記録に噛み跡として残されている。しかし、化石の多くは分離されていたり断片として発見されるため、当時の主要な栄養パターンや役割に関して得られる情報は限られていた。ある最新論文によると、研究者らは、後期中新世(およそ2300万年前から250万年前)ペルーのマッコウクジラ上科の骨の化石に付けられた噛み跡から、サメの集中的狩猟の証拠を見つけた。

ペルーはブラジル、アルゼンチンに次いで南米で3番目に大きい国だ。インカ帝国の遺跡、マチュピチュを見るために多くの観光客がこの地を訪れるが、それはこの国あるいはその周辺の歴史の中ではほんの一瞬の出来事にすぎない。当時の海は、現在と同じく、生命で満ち溢れていた。最小の微生物から最大の捕食者まで、彼らにとってマッコウクジラ上科はとんでもない大敵だった。しかし、ピスコ層で発見された残骸によると、間違いなく何かが起きていた。ペルー南海岸のイカ砂漠に位置する地層は、世界的に重要な化石堆積層であり、新生代海洋の世界的に並外れたラーガーシュテッテ(優れた化石が産出される地層)として知られている。

そこにマッコウクジラがいたことは驚きではなかった。マッコウクジラはクジラ類最古の種で、現存するマッコウクジラは3種類(マッコウクジラ、コマッコウ、オガワコマッコウ)しかないが、その化石記録には、生態学的に多様な種が存在していたことを示す証拠がみられる。しかし、何よりも驚きだったのは骨につけられた痕跡だった。

噛み跡だ。この古代生物の名残りは、栄養相互作用と競争の証拠を化石記録に残すことで、今日の研究者を助けている。最近公開されたこれらの発見によると、サメはこれらのクジラの前頭部を標的にして、その脂質に富んだ鼻部を常食としていた。
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翻訳=高橋信夫

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