ビジネス

2022.12.01

カインズ流「ハリネズミ経営」で、新生ハンズはどう磨かれるか

「手」の漢字をモチーフにしたハンズの新ロゴ 新生ハンズはどう変わるのか

カインズのグループ入りをし、新しいロゴを掲げたハンズ1号店が名古屋で誕生した。すでにハンズの一部店舗では、カインズのおすすめアイテムの取り扱いを始めるなど、ハンズとカインズの連携が始まっており、話題になっている。

今後、全国的にハンズの店舗改装が控えており、ハンズはどのように生まれ変わるのだろうか。

カインズ執行役員CSO(チーフストラテジーオフィサー)で、ハンズ取締役も務める山田英輔氏に話を聞いた。


尖らせる先に何があるのか? 新形態「パーパス」型の買収


──新しいハンズが誕生し、カインズとの連携は今後どのようにされますか。


まず考え方の前提として、ハンズとカインズは別のブランドです。異なるお客様に、それぞれの価値を提案していく。なので、いかに統合するかという発想が基本的にはありません。

一方で、都市部などでホームセンターのような店がなくて困るという声はあります。なので品揃えの面で一部そういった点を補完するという考えはあり得るのですが、原則は「ハンズの良さを尖らせていく」というのが大きなポイントです。ハンズはハンズでしっかりと、ブランドに対するお客様の期待を越えられるように磨き上げていくのが原則です。

──カインズやワークマンなど31社でつくるベイシアグループは、2年連続で総売上高1兆円超えを達成しています。今回のハンズ買収の背景を教えてください。

一般的に、小売がM&Aをする場合に大きく考えると2つのアプローチがあります。

まずは「ブランド統合型」。買収後にブランドを一つに統合するというアプローチで、単一のブランドの成長スピードを加速させるためのM&Aですね。もうひとつは「規模の経済追求型」。ブランドは統合しないものの、物流や仕入れを統合したり、管理部門を一元化したり、あるいはブランドは違うけれど同じ商品を売るなどによって、コスト面でのシナジーを生み出して、経営効率を高めるためのM&Aです。

今回はどちらでもありません。カインズやワークマンを含むベイシアグループがやっているのは、小売という業態を通じて社会を豊かにしていくこと、その共通の目標に向けて小売のブランドのポートフォリオを作っていくということです。私たちは「ハリネズミ経営」と呼んでいますが、それぞれのブランドがお客様に向けて個性ある尖った価値を生み出す小売事業を展開する企業集団です。

なので、ハンズも同質化させるのではなく、グループが持つ小売のノウハウや、商品開発力、デジタルイノベーションを活用して価値を「尖らせる」というのが基本です。でも、「尖らせる」先に何があるか?が大事だと思っています。カインズもハンズもDIYという生活文化を広めたい、という共通の目標を持っています。それぞれやり方は違う。でも両社で協力して同じ目標・パーパスを実現する。それが今回の買収です。そういう意味で、私たちが取り組んでいるのは「パーパス型」という買収の第3の形態と言えるかもしれません。
次ページ > 「カインズとハンズ、手をくみました」

文=督あかり

ForbesBrandVoice

人気記事