中国政府の当局者は同時に、風力および太陽光発電の規模拡大を促す努力は続けると述べたものの、新たに計画された石炭火力発電所は、自国のエネルギー安全保障をさらに確かなものにするための取り組みの一環だ、とブルームバーグに対して述べた。
興味深いことに、中国の代表団が引き合いに出したのは、欧州が自ら招いた、深刻化する一方のエネルギー危機だった。中国政府が低炭素エネルギー構成へと段階的な転換を図る上で避けたい事態の例として、欧州のようなエネルギー危機が挙げられたのだ。
もちろん、中国の共産党政権は、エネルギー安全保障が、国家の安全保障に関して最も重要な要素であることを承知している。ドイツをはじめとする一部の欧州諸国の政府はこの点をすっかり忘れ、準備が不十分なままにエネルギー転換を促進しようとした。その結果として、自国の社会を、原油や天然ガスをロシアに依存する状況に意図的に追い込んでしまった。
中国の当局者はすぐに、石炭火力発電所の拡大計画はそれほど大規模なものではなく、短期的に電力を補う「ばんそうこう」のようなものだと述べ、より長期的な二酸化炭素削減について強調することで、騒ぎを収拾しようとした。
だが、ブルームバーグが指摘するように、今後の数年で中国が建設を計画している石炭火力発電所は270ギガワットという規模だ。これは、発電に石炭を多く利用している他国の総発電量を大きく上回る。計画が100%実行された場合、増加分の発電量は、現在の米国の発電容量の6倍という規模になる。
世界の石炭消費量は、2019年と2020年に前年より減少したものの、2021年には一転して大幅に増加した。2022年7月に発表された国際エネルギー機関(IEA)の報告書によると、2022年の石炭消費量はさらに記録を更新する見込みであり、2021年から0.7ポイント増加して80億トンを超えるという。
中国による石炭火力発電所の大幅増強計画の発表は、西側諸国が、自国の化石燃料消費に制限を課そうとしてさらに大胆な施策を打ち出し、その結果としてエネルギー安全保障にヒビが入る事態を招いているタイミングと重なった。