やる気、決断力、思考力をアップ 太古から受け継がれる「胃腸活」とは

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「肚」は司令塔の役割を果たし、脳との相関関係で、お互いに協力しあって身体マインドを上げます。脳と腸がセロトニン(人間の精神面に大きな影響を与える神経伝達物質)の多くを産出しているのもその活動のひとつで、脳からのセロトニンが減ると腸が補う仕組みがあります。

腸から産出されるセロトニンは、腸の環境の悪化により著しく減ることから、昨今「腸活」が注目を浴びています。

生物の中には、脳がない生物はいますが、腸のない生物はいないと言われています。脳がない生物は、腸で判断して行動をする事がわかっています。脳がある場合も、腸は脳から自立しているため、なんらかの信号が送られたときに自主的に判断して動いています。

つまり腸は、自身とそこに住む「腸内細菌」とともに独立した世界を形成して、私たちに健やかな生活や精神的な安定をもたらしている、大変優れた臓器なのです。

その「腸」つまり漢方的に言う「脾=土」を中心にしたトリートメントを普段から励行することは、日々のパフォーマンスアップに大変役立つと思います。

実は漢方薬の多くが「脾=土」を養う生薬です。このことからも、古来先人たちが胃腸を大事に考えてきたことがわかります。

プロテインが身体の「害」になることも


さらに重要なのは、「脾」の一部である「胃」。すべての栄養は胃で分解され、小腸へと運ばれて吸収されます。胃は分解して小腸に送るまでの重要な解体工場なのです。その解体工場の工員が、消化酵素です。

実は昨今注目を浴びているプロテインも、吸収できなければ、単なるタンパクの害になってしまいます。未消化に終わり、アレルギーなどの原因になることもあります。

この消化酵素は、年齢とともに低下します。特にタンパク質を分解する酵素は、年齢により大きく変化しするのです。以下の図の通り、20歳代の分泌量を100%とした場合、タンパク質の分解酵素である「ペプシン」「トリプシン」は40代で激減。そして70代で大激減します。

図:20歳代を100とした時の消化酵素低下率

つまり、いくら「タンパク質をとりましょう!」「トレーニングでプロテインを!」と言っても、消化できなければ意味がありません。つまり、タンパク質を摂取する事と同時に「消化を助ける」ことが大きなポイントになります。

吸収を司る「腸」、分解して吸収しやすくする「胃」。つまり漢方で言う「脾」=「土用」は本当に身体の本丸、中心です。その「脾」を養い、労わる太古の教えが、1年に4回ある「土用」です。

これからは少し「土用」を意識してもらうと、不定愁訴の改善に役立つと思います。ぜひ「腸活」と同じく「胃」による消化にも着目して、日々のパフォーマンスアップにお役立てください。

【参考文献】
・「臨床栄養 臨時増刊 脳腸相関 各種メディエーター、腸内フローラから食品の機能性まで」(医歯薬出版)
・藤田紘一郎「こころの免疫学」(新潮社)
・山田光胤、代田文彦「図解 東洋医学」(学研)

文=高田浩孝

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