そこで今回は、忘年会シーズンでもあるこの時期に知っておきたい「胃腸活」を、漢方医学から紐解いていきます。
「土用」は一番重要な臓器のこと
立冬と言えば、年に4回ある「土用」が開ける日のひとつです。土用は次の季節の支度をするのに重要な期間で、「立春」「立夏」「立秋」「立冬」が「土用の開け」、そこから遡ること18日前を「土用の入り」としています。代表的なのが、鰻を食べる人が多い「土用の丑の日」ですね。
古来先人は、土用を中心に季節を4つに分け、春夏秋冬としました。その思想が、漢方医学思想でよく用いられる、「五行」説です。五行説は、土用を中心に南=夏、北=冬、東=春、西=秋を表します。風水学で使う「八卦盤(ハッケイバン)」もこの原理でできています。
漢方医学的には、それぞれ臓器が配置され、南=心(しん)、北=腎(じん)、東=肝(かん)、西=肺(はい)、真ん中の「土」を「脾(ひ)」と表します。これが俗に言う、「五臓六腑にしみわたる」の「五臓」です。
この五臓は、漢方医学的に現代の臓器を表しています。例えば、「肝」は、現代医学の「肝臓」を含む、「自律神経」「子宮」「目」「血液」「間脳」「筋腱の働き」を含めた総称です。「肝臓」を筆頭にした「肝」というカテゴリーだと考えるとわかりやすいかもしれません。
五臓の中心に鎮座する「土用」とは、身体や病気の維持管理には一番重要な臓器、概念だと言われています。「土」に「月(にくづき)」をつけると「肚(はら)」と言う字になることからもわかります。
「腸活」が精神安定ややる気の向上につながる
漢方医学ではよく、「腹(はら)は肚(はら)にあらず」と言います。「肚」を国語辞典で調べると、「動物の身体のうち、胴の下半部。脊椎動物では、胸の横隔膜と腰の骨盤との間で、胃腸などを収める部分」と書いてありますが、漢方ではそれを「脾」と表しています。
実は、多くの日本語に「肚」を使った慣用句が出てきます。「肚が立つ」「肚に据える」「肚を破る」「肚に落ちる」「肚が座る」など、意識や気持ちといった精神を司る慣用句が多いのが特徴です。つまり、「肚」は現代医学的に考える「脳」との関連が大変深いのです。
昨今、医療現場でも「脳腸関連」「脳腸相関」などといった言葉が聞かれます。腸のマネージメントが脳に良い効果をもたらし、精神的な安定ややる気の向上につながることがわかってきているのです。これは、腸(=肚)が重要だという証です。