「みんな違う現実を生きている」メタバースを超えた先の現実科学とは?

ハコスコ代表、デジタルハリウッド大学大学院教授・藤井直敬氏


一方で「認知の操作」とは、簡単に言えばトランプマジックのようなもの。

例えば、テーブルの上に置かれているトランプを、観客がちょっと目を離した隙に消したり動かしたりして現実を誤認させるもの。そのインスタレーション作品も、人の生理機能や認知をコントロールすることで、別の現実を見せたと言えるかもしれないですね。


Konelが手掛けた“没入する落下型インスタレーション”「DEEEP」のコンセプトビジュアル。暗闇の中で落ち続ける感覚を体験するこのイベントは、体験会の予約が数時間で満席となった

──テクノロジーが現実の差を縮めたり広げたり、といった可能性は無限にありそうです。最後に、藤井さんが目指すメタバースと現実科学の理想的な関わり方とはなんでしょう?

僕は、メタバースはあくまで人の生活を拡張するための「実験場」だと考えていて、他のメタバースを生業とされている方とは少し考え方が異なるかもしれません。

メタバースによって、人々の時間・空間の制約をある程度外せることが分かってきましたが、その時間・空間を操作するテクノロジーの創出が先に立って、テクノロジーを使う目的や価値については、まだ議論が十分なされていないように感じます。

僕自身、「現実科学」の目的はテクノロジーで現実を操作して社会の豊かさを創出することだと思っています。メタバースの延長線上で、そうした世界をつくっていきたいですね。




藤井直敬◎医学博士・脳科学者。一般社団法人 XRコンソーシアム代表理事/東北大学 特任教授/デジタルハリウッド大学大学院 教授。東北大学医学部卒業。同大大学院にて博士号取得。1998年よりマサチューセッツ工科大学(MIT)、 McGovern Institute 研究員。2004年より理化学研究所脳科学総合研究センター所属。2014年ハコスコを起業。主要研究テーマは、適応知性および社会的脳機能解明。主な著書に『つながる脳』(毎日出版文化賞 受賞)『ソーシャルブレインズ入門』『拡張する脳』『脳と生きる』など。

文=出村光世

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