「みんな違う現実を生きている」メタバースを超えた先の現実科学とは?

ハコスコ代表、デジタルハリウッド大学大学院教授・藤井直敬氏


──「メタストア」はデモサイトがコンビニになっていますが、ここがポイントだと思っていて。従来の二次元のブラウザとは全然違う、メタバースならではの世界観を提示できていると感じました。藤井さんは、どういった購買体験を目指していますか?

一般的に、メタバースでの買い物って超えなきゃいけないハードルがあって消費者も店舗も少し面倒くさいんですが、一方で空間に根ざした人間関係を築けるというメリットがあります。


「メタストア」のコンビニ風デモサイト

例えば、Zoomなどでオンラインミーティングを開催するとき、通常のPCだとURLが発行されて、ミーティングが終わったらルームは消失されますよね。ただ、メタバースの場合だと、特定の空間や店舗にリンクを紐づけることで、ここに行けば誰々に会えるという体験を構築できる。これは従来のECサイトではできないことです。

──先ほどの“一回性”の再現という話に関連してきますね。

そうですね。

あと、「メタストア」はボイスチャット機能がついているので、営業時間であれば実際に店員さんとも会話ができます。導入を検討する店員さんの中にはこの機能を勘違いしてしまい、「24時間待機していないといけないんですか?」と不安になる方も多くて。それはリアルな店舗と同じく、対応時間を区切ってしまえばいいと思います。

──オンラインだからといって必ずしも対応時間や営業時間が24時間である必要もないですよね。ある種の不自由さや“面倒くささ”があってもいい。

僕も、レコードショップで30分くらいかけて端から端まで掘り出し物を漁る、そういう“面倒な時間”を過ごすのが好きなのですが、オンラインショップだとこうした体験は生まれにくい。店主の強い性格や趣味が反映されたクセのあるお店が「メタストア」でたくさん生まれれば面白いんじゃないかなと。

僕が「メタストア」でつくってほしい店舗って、まさにそういう“面倒くさい”お店です。あの店に行けばすごいものが手に入るって噂を元にメタバースの店舗を訪れると、奥から店員さんが出てきて「こんなのあるよ」って見せてくれるような。

今、メタストアを導入していただいている熟成肉を扱う「格之進メタストア」というミートショップがまさにそうで、そこでは肉コンシェルジュがお客さんとチャットで対話型販売をしていて市場では出回らないような塊肉を売っていたりする。「これなんのお肉?」「これは珍しい〇〇のお肉でね…」と、まるでアナログな市場のようなやりとりがオンラインで活発に行われているのが面白いですね。
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文=出村光世

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