「ブラックパンサー」最新作 スーパーヒーロー映画を超えた上質な楽しみ

(c)Marvel Studios 2022

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まず前作「ブラックパンサー」(2018年公開)の話から始めよう。最も興味を惹かれたのは、アフリカの熱帯雨林のなかにワカンダという超近代的な都市が存在するという設定だ。

ドバイで見かけるようなユニークな高層ビルが建ち並び、街には空を飛ぶ乗り物が行き交い、SF映画でよく描かれるような未来都市がバリアに守られて人知れず存在する。

国の繁栄を支えてきたのは、太古の昔に隕石とともに宇宙から飛来した「ヴィブラニウム」という物質だ。ダイヤモンド以上の強度を持ち、ウラニウムを超えるエネルギーを秘めており、周囲のものにも驚異的なパワーをもたらす。ワカンダの高度な文明はこのヴィブラニウムによって支えられてきたものだった。


(c)Marvel Studios 2022

ワカンダは外交的には孤立政策を取り、超強力な武器をもつくり出すことができるこの物質が国外に出ることを阻止していた。表向きは農耕で暮らす国を装いながら、特殊のシールドを隠れ蓑にして、人類で最も進化した科学技術を有する国を築いていたのである。

しかし、このヴィブラニウムの存在が世界に知られるようになり、激烈な争奪戦が始まる。つまり「ブラックパンサー」の物語は、石油やレアメタルをめぐる現代の資源戦争にも擬えることができるのだ。

「絵空事」に不思議な「リアルさ」が


「ブラックパンサー」は、「アイアンマン」や「スパイダーマン」を生み出したマーベル・コミックを原作として生まれた作品だ。しかし物語に含まれるメッセージ性や作品自体の完成度の高さから、スーパーヒーロー映画としては初めてアカデミー賞の作品賞にノミネートされている。他にも7部門で候補となり、作曲賞、美術賞、衣装デザインの部門では受賞も果たしている。

超人的な力を持つブラックパンサーにして、ワカンダの国王テイ・チャラを演じたチャドウィック・ボーズマンも主演男優賞にノミネートされたが、残念ながらその報せを待たずに、2020年8月、43歳の若さで癌によって帰らぬ人となった。
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文=稲垣伸寿

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