ビジネス

2022.11.21

人口1000人の町でスタートアップ支援をする理由

マーク・ネイガーは、週末54時間を使ってチームを組んで協力し、実際に起業可能なスタートアップの構築を目指すスタートアップ体験イベント「スタートアップウィークエンド(以下、SW)」を世界120カ国以上、年間1000イベント、20万人以上のコミュニティに育て上げた立役者だ。

その彼が2016年、人口3000人ほどのアメリカ・コロラド州の小さな田舎町、テリュードに移り住み、そこでベンチャーファンドを立ち上げた。現在はさらに小さな人口1,000 人ほどの町、リッジウェイに拠点を置き、スタートアップ支援を行うネイガーに話を聞いた。

「スタートアップウィークエンド」は8年で急成長し、世界最大級のスタートアップ・エコシステムとなった。人を巻き込む力にとどまらず、アントレプレナーシップには人や世の中の文化、価値のそのすべてが含まれていると明確に感じている。

アントレプレナーシップは地球上で最も強く人を感化し、人を結びつける力だ。私はMBA修了後に、リーマンショックをきっかけに勤めていた会社を辞め、自身で起業しようとしたが、そのときMBAで学んだ知識が実際にはまったく役に立たず、本当に大切なのは人で形成されている包括的なコミュニティであることに気がついた。

SWをここまで拡大させるにあたって活用したのは、SW経験者が自然と世界中に広がっていくことを可能にする経験の分散化モデルだ。SWイベントを開くには運営者とファシリテーターの双方が必要だが、イベント運営者はほかのSWイベントの参加経験がなくてはならず、ファシリテーターはSWイベント参加経験、運営経験の双方が必要であることにした。

このように経験の階層構造を構築することで、イベントの開催のためにメンバーが世界中を駆け巡ることになり、コミュニティのもつ力によって団体が自然に拡大していった。

コミュニティの免疫システム


2016年にSWを離れ、コロラド州に移住した。私がいま住んでいるリッジウェイという場所はコロラド州にある人口1000人ほどのとても小さな町だ。この町に移り住んだ理由は、そもそも私自身が地方の小さな町で育ったこと、そして何よりSWでの経験を経た自分が次に果たすべき使命は起業家精神を小さな共同体にも浸透させることだと感じたからだ。

地方がどうやって大都市に打ち勝つのか、そのプロセスに興味と情熱を感じている。現在はベンチャーファンドを立ち上げ、コロラド州の地元の会社に投資している。最終目標はコロラド州を地方都市経済再興のロールモデル都市にすることだ。
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文=岩坪文子、荒川未緒 イラストレーション=細山田 曜

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