1. ビジネスモデルロジックの再考
サステナビリティを企業戦略や企業価値創造システムに組み込む上で、最高経営責任者(CEO)が影響力を持ち、中心的役割を担っていることは間違いありません。この点を踏まえると、会社のトップが「模範を示している」と答えた従業員がわずか33%であることは驚くべきことです。従業員は、単に姿勢を示すだけのリーダーを求めていないのです。役員室からサステナビリティを推進するには、コミットメントを行動に移すことが必要です。リーダーたちが変わらなければ、組織も変わることはできません。
最高経営責任者(CEO)の本来の役割は、会社のビジネスモデルを見直し、価値を創造、提供、獲得する新たな方法を見出すことです。しかし、多くの既存企業は、従来のビジネスモデルのロジックに頼っているのが現状です。まずは、サステナビリティにはコストがかかるという前提を覆す必要があります。
「ビジネスをする、収益が上がる、コストがかかる、利益を出す、そして利益が出た後、その利益の中からどれだけ善いことに使うかを決める」という従来のロジックは、もはや十分ではありません。これはつまり、利益の一部を社会のために使うなら慈善活動をしていることになり、一方で、利益が順調に出ないと、そうしたことへの取り組みをしないということになります。
私たちは今、サステナビリティがビジネスにとって良い方法であるといえる段階まできています。そのため、利益をどのように使うかではなく、そこからどのように稼ぐかが重要なのです。このような、サステナビリティに焦点を当てたビジネスモデルは、ビジネスとサステナビリティの両方のインパクトを拡大させる機会をもたらします。統合的なデジタル・サステナビリティへの変革を求める企業の61%は、すでにこれらの新しいビジネスモデルから収益の10%以上を生み出しており、80%近くが3年後にはそのようになることを期待しています。
2. サステナビリティへのスマートな投資
私たちは、サステナビリティと技術革新を統合的にアプローチすることを提唱していますが、これは投資の観点からも有益です。企業はこれらを別々に優先させるよりも、むしろ戦略的に統合することで大きな相乗効果を発揮し、イノベーションへの投資に対して、金銭的にも非金銭的にも高いリターンを達成することができます。
例えば、研究開発への投資の一定割合をサステナビリティとテクノロジーに一緒に割り当てることで、個別の最適化ではなく、統合的な最適化を実現することができます。一例として、フォルクスワーゲンはハイブリッド車の開発費として2020年に110億ユーロを当てています。
エンドツーエンドのバリューネットワークのデジタルツインがあるなら、スナップショットを取り、財務指標を適用し、戦略的オプションを評価することで、重要な投資の問題に対処するためのシナリオ分析を行うこともできます。
例えば、新しいテクノロジーを踏まえて、どの時間枠でどの程度のCAPEX(資本的支出)投資が必要か。クリーンな輸送や生産プロセスの技術に投資した場合、営業費用のイメージはどのように変化するか。炭素市場の出現はこのイメージにどのような影響を与えるのか、また、どれくらいの炭素価格を想定するとよいのかといった課題の解決を促します。
デジタルによるオペレーティングモデルにより、最高経営責任者(CEO)は自らの意思決定が組織に及ぼす影響を予測し、情報と意思決定の権限を社内のより多くの部分にまで拡大することが可能となり、変革へのコミットメントを高めることができるようになります。