ビジネス

2022.11.14

中国2大フィンテックAlipayとWeChat、取り締まりで弱体化するも健在

過去数年間、中国はフィンテックを厳しく取り締まり、多くの人がそれを信じるようになった。フィンテック大手の終焉を告げるもののように響いたがそのような噂は大げさに誇張されてきたものだ(Getty Images)

また、6月にはロイター通信が、Ant Groupによる金融持株会社設立申請を、中国人民銀行(PBoC)が受理したと報じた。これは、Antにとって、会社の再建とIPO再開の準備のための大きなマイルストーンとなるだろう。しかし、AntもPBoCもまだ、ロイターの報道が正確であるかどうかを認めていない。Antは、同社がIPO手続きを再開する許可を得たとするロイターの報道には反論している。ロイターの報道が正確かどうかは、現時点ではなんとも言えない。しかし、最初の試みで起きた大失敗を考慮すると、Antはプロセスを控えめにし、IPOが問題なく進むことが確実になるまで正式な発表を控えたいと考えている可能性がある。

それでも1つのアプリがすべてを支配する?

IPOの再開を成功させるためには、Alipayのスーパーアプリを存続させることが重要だ。2021年10月に各メディアは、PBoCがAlipayにアプリを分割させ、収益性の高い融資事業のためには別アプリを作るよう強制する可能性があると報じた。スーパーアプリのAlipayを分割させることは、すでに行われたHuabei(従来のクレジットカードに近い)とJiebei(少額無担保融資を行う)を新しい事業体に分離することよりもインパクトがある。この再編にもかかわらず、現段階でのAlipay利用者は、Alipayアプリケーションから便利な融資サービスを利用することができている。もし、それができなくなれば、よく知られたアプリの「粘着性」が失われてしまうだろう。

HuabeiとJiebeiの着実な成長が続いていることは、AntのIPOを進める上で、投資家の信頼の獲得に大きな役割を果たすと思われる。HuabeiとJiebeiを含むAntのクレジットテック部門は、同社にとって大きな稼ぎ頭である。2020年上半期にはグループの売上高の39%を占め、Antの主要事業である決済処理を初めて抜いた。

AntとTencentの両社は、その規模と全体的な重要性から、信頼できる挑戦者がいないまま、中国におけるフィンテック業界のトップ企業として手ごわい存在であり続けている。しかし、彼らの驚異的な成長と並外れた収益性の日々は終わり、それは今や中国の急成長消費者テクノロジー時代とともに歴史の一部となっている。中国政府は、フィンテックの取り締まり緩和を示唆しながらも、フィンテックに対して、決済などの金融サービスの中でも収益性の低い分野に注力するよう促し続けている。

今後、AntとTencentは、フィンテック黎明期に比べて、控えめな利幅とコアビジネスへの大きな制約に満足しなければならないだろう。これは、彼らの成功ならびに、中国政府が大型ソフトテック(主にインターネットを使ったB2C事業など)からハードテック(半導体などの主にもの作りに注力する事業)へと方向転換したことによる代償なのだ。

forbes.com 原文

翻訳=酒匂寛

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