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2022.11.14

中国2大フィンテックAlipayとWeChat、取り締まりで弱体化するも健在

過去数年間、中国はフィンテックを厳しく取り締まり、多くの人がそれを信じるようになった。フィンテック大手の終焉を告げるもののように響いたがそのような噂は大げさに誇張されてきたものだ(Getty Images)

さらに、Antは巨大な親会社であるAlibaba(アリババ)から分離することが求められている。7月には、両社はデータ共有契約を終了することで合意し、一方Antの最高幹部は全員Alibabaのパートナーシップ構造から退任した。とはいえ、AlibabaはまだAntの株式の33%を保有している。

投資家は、この変更が収益性の足かせになると見ている。特に同社の消費者金融業務の可能性への影響が考慮され、Antの評価額は急落している。ブルームバーグは、Fidelity Investments(フィデリティ・インベストメンツ)が、2021年6月に780億ドル(約11兆円)、IPO頓挫直前には2350億ドル(約33兆2000億円)としていたAntの予想を、今年5月末には700億ドル(約9兆9000億円)に引き下げたと推定している。一方、BlackRock BLK (ブラックロック) とT. Rowe Price Group(ティー・ロウ・プライス・グループ)はAntに関してはやや強気で、前者は1510億ドル(約21兆3000億円)、後者は1120億ドル(約15兆8000億円)と評価している。

Antと同様、Tencentも規制当局から金融持株会社への再編を命じられたが、これまでのところ、同社の構造の変化はAntで起きているものほど劇的なものではないことがわかっている。理屈の上では、従来の銀行のように当局が規制できる金融持株会社の下に、Tencentは銀行、証券、保険、信用調査などのサービスを統合する必要がある。

WeChat Pay(ウィーチャット・ペイ)が金融持株会社に含まれる可能性もあり、その場合、中央銀行の監督下に置かれることになる。規制当局は、WeChatとQQのウォレットサービスのバックエンドプロバイダーであるTenPay(テンペイ)部門が所有するTencentの現在の決済ライセンスを、WeChat Payのサービスをカバーするには不十分であると考えていると報じられている。

市場でもQRコードが活躍
日常の買い物にもQRコードが活躍(Getty Images)

終盤戦に向けて

現在、中国では厳しいゼロコロナ規制の中で苦戦している経済を刺激するための幅広い動きの一環として、フィンテックの取り締まりを緩和する兆しが見えている。この可能性が最初に明示されたのは、6月に中国の国営メディアが、習近平国家主席が議長を務める最高レベルの会議で、中国の大手決済企業とフィンテック部門の 「健全な発展」 計画を承認したと報じたときだ。会議では、中国が全体的な金融リスクに対処するために大手決済企業の監督を強化し、プラットフォーム企業が実体経済にサービスを提供することを支援することが言及された。中国政府はこの会議で、フィンテック企業に対して「原点に立ち返る」よう提言しているが、それは特定の銀行サービスを縮小し、もっぱら決済に集中すべきだという意味なのかもしれない。
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翻訳=酒匂寛

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