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2022.11.14

中国2大フィンテックAlipayとWeChat、取り締まりで弱体化するも健在

過去数年間、中国はフィンテックを厳しく取り締まり、多くの人がそれを信じるようになった。フィンテック大手の終焉を告げるもののように響いたがそのような噂は大げさに誇張されてきたものだ(Getty Images)

中国のフィンテック業界は、2020年11月3日以降大きく変わってしまった。その日、上海と香港の2拠点で上場し、370億ドル(約5兆4000億円)の資金調達と3150億ドル(約46兆円)という巨額の企業価値が見込まれていたAnt Group(アントグループ)の大型IPOが、中国の規制当局によって突然否決されたのだ。AntのIPO中止はやがて、中国の金融サービス業界におけるビッグテックの支配を抑制するための拡大キャンペーンの始まりだったことが明らかになった。

規制当局が、かつてはゆるぎなく金融システム上重要と見なされていた企業を狙うのには、現実的な理由と政治的な理由の両方があった。現実的な理由は、Antとその最大のライバルであるTencent(テンセント)が、一般ユーザーや競合他社を犠牲にして、強力な市場ポジションを利用できる不公平なフィンテック二極集中を作り出していたからだ。政治的な理由は、このフィンテック大手が既存金融機関の領域に進出したからだ。AntやTencentとの関係を通して既存の金融機関が利益を得たことは間違いないものの、おそらくそれぞれの帝国を築くのに少し野心的すぎたのだ。中国の政治的な風向きは変化し、もはや熱狂的で率直な消費者向けテクノロジー企業家を好んでいるわけではない。

フィンテックの取り締まりが始まってから約2年、まだ決定的な終わりは見えないが、AntとTencentのフィンテックビジネスがどのように変化したかは探る価値がある。彼らは最早かつてのままではなく、以前のようなかたちを保ち続けてもいない。

分離の程度

これまで規制当局は、中国のフィンテック大手の支配を抑えるために、彼らの事業要素を分解し、より銀行に近い行動を取るよう強制することに重点を置いてきた。Antは最終的に中国人民銀行(PBOC)が監督する金融持株会社となる。

一方、Antは融資の方法を変えなければならなかった。商業銀行が債務の大部分を引き受け、Antが金利収入の一部を得るという従来のビジネスモデルは、規制当局から過度のリスクがあると見なされていたからだ。Antは現在、消費者金融業務のなどのライセンスを有する専門部門の、Chongqing Ant Consumer Finance Co.(重慶Ant消費者金融社)を擁していて、AntのクレジットサービスであるHuabei(華唄、ファーベイ、物品購入ローン)とJiebei(借唄、ジェーベイ、小口ローン)を提供している。従来の小口金融事業とは異なり、Antはこの新しい部門を通じて、提供する消費者金融により多くの資金を供給し高いデフォルトリスクを負わなければならない。

また、規制当局は中国のフィンテック大手に対して資本金の引き上げを要求している。2021年10月に、Antは資本準備金を取り崩して、資本金を238億元(約4802億円)から350億元(約7068億円)に引き上げたと発表した。
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翻訳=酒匂寛

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