セロトニンを分泌する方法として知られているのは、次のようなものです。
・日光浴をする
・リズミカルな運動をする
・十分な睡眠をとる
・人との会話、音楽や小説など感情を動かすものに触れる
こうした行動が体に何を起こすかというと、細胞の活性化です。つまり、セロトニンが十分に分泌される条件とは、私たちの体を構成している約37兆個の細胞を元気にすることなのです。
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ライフサイエンスの進化
細胞が生き生きとした状態を保てると、心身ともに病みにくくなります。それにより、自分らしく生きることにも前向きになれます。まさに、ウェルビーイングな状態です。
では、いかに細胞をいつまでも生き生きとした状態に保てるか。これが、ライフサイエンス分野からウェルビーイングを実現するための課題です。
年をとると疲れやすくなったり、体のあちこちに痛みを感じるようになったり、病気を患ったりするのは、細胞の老化が原因です。加齢が原因なら仕方がない。そう思われるかもしれませんが、私たちは100年生きることができるようになりました。
さらにいえば、これからは、健康なまま100年を生きることができる時代になるかもしれません。それを可能にするのが、ライフサイエンスです。
長寿研究の第一人者デビッド・A・シンクレア博士が、自著『LIFESPAN 老いなき世界』の中で唱えた仮説に、老化は人間の運命ではなく『病気』であり、治すことができる。という一節があります。病気ということは、治したり、予防したりすることもできるということです。これまでは、細胞の老化を遅らせることはできても、老化により劣化した細胞は元に戻せない、老化は不可逆だといわれていました。
しかし、ライフサイエンスの進化は、細胞を若返らせる方向に近づいています。たとえば、東京大学医科学研究所の中西真教授による、ラットを使った動物実験では、ヒトに例えれば70~80歳代のはずのマウスが、40~50歳代程度まで握力が若返った、といったような研究結果も発表されています。
現在でも、70歳を超えてバリバリ働いている方もいますが、これからは当たり前のように80歳、90歳まで働けるようになるかもしれません。生涯現役のまま、寿命を迎えて、突然ぽっくり。そんな人生になるかもしれないのです。
最近の研究では、人によって体の老化速度であるPOA(ペースオフエイジング)に差があることもわかってきました。
ダニーデン研究と呼ばれるその研究では、ニュージーランド南島のダニーデン市で、26歳から45歳までの20年間の老化度を計算し、1年の間にどのくらいのペースで生物学的年齢が進んだかを数値化。それにより、老化のペースは各人によって大きなばらつきがあることが明らかになりました。
人間は、誰でも暦上は同じく365日で1歳年をとりますが、1年に0.4年しか老化していない人がいる一方で、最も老化のペースが速い人では年に2.44年も老化が進行していたのです。1年で2歳の差は、見た目に相当な違いが生まれるはずです。