ライフサイエンスから考えるウェルビーイングビジネス

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先日、ラスベガスで開催されたウェルネスフード素材&テクノロジーの展示会「SupplySide West 2022」に参加するためにコロナ禍以降久しぶりに西海岸を訪れました。アメリカでは、屋内でもマスクをしている人を見かけることは滅多になく、街はコロナ以前の賑わいを取り戻しているようでした。

空港からの移動中、タクシードライバーにコロナ禍以降の一番大きな変化は何かと尋ねると、「急速な物価上昇」だと言っていました。コロナ以前は週休2日で、週末は家族とオフを楽しむ余裕があったが、今は週7日働かないと生活が出来ないと嘆いていました。

実際、フードコートでサンドイッチとドリンクを頼むと20ドルを超え、今の超円安レートで換算すると3000円。東京だったらレストランでランチのフルコースが食べられる価格です。


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そして、もう一つが健康への意識の変化だと話していました。「自分も家族もコロナにかかり、仕事も休まざるを得なくて大変な思いをした。これまでは食べ物にあまりこだわっていなかったが、最近ではネットの記事やSNSで免疫力向上に役立つ栄養素やサプリメントを探して購入している」と。

3年ぶりにリアルで開催されたSupplySide West 2022は、多くの企業が出展し、世界中から来場者が集まっていました。

アメリカではウェルビーイングビジネスがウェルネス産業を中心に拡大してきていますが、体と心、そして社会的に満たされた状態であるウェルビーイングを実現するビジネス領域において、体と心の健康をテーマにしてきたヘルスケアやウェルネスといわれる産業が先行するのは自然の流れです。

自分らしく生きるために、健康になる


それでは、ヘルスケア産業やウェルネス産業をウェルビーイングの視点でとらえるとどうなるでしょうか?

まず、健康がゴールではなくなります。ウェルビーイングの視点では、体や心が健康になることは、ウェルビーイングを実現するための大事な要素のひとつに過ぎないからです。自分らしく生きるために、健康になる。これが、個人がウェルビーイングを実現するために求められることです。

ここからは、ヘルスケアとウェルネスをまとめにして「ライフサイエンス」として話を進めていくことにします。

そもそも、体と心は切り離せない関係にあります。体の調子が悪くなると気持ちが沈んでくるし、逆に体の調子よければ気持ちが前向きになったりします。緊張するとお腹が痛くなるとよく聞くように、みなさんも、体と心がつながっていることはなんとなく気づいていると思います。

体と心を同時に満たすヒントが、神経伝達物質のセロトニンです。セロトニンは幸せホルモンと呼ばれることもあり、分泌されると心が落ち着くだけではなく、生体維持機能も向上します。
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文=藤田康人

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