日本のドラマ「Mother」のスペイン版が大ヒット。ショーランナーが語ったその理由

ドラマ「Mother」のスペイン版「Heridas(傷ついた女性たち)」より(c)Jau-Fornés

子どもの虐待を扱いながら母性というテーマを追求したドラマ「Mother」は、国内での初放送(2010年)から12年が経過したいまも、世界各国でリメイク版がつくられ、注目を集めるコンテンツとなっています。

「Mother」を最初にリメイクしたのはトルコでした。現地では2016年10月から放送され、かなり大きな評判を呼びました。予定していた話数が大幅に増えたことからも人気ぶりがうかがえます。日本のオリジナル版は全11話でしたが、トルコのリメイク版は第33話まで放送が続きました。

大ヒットしたこのトルコ版は世界約50か国で放送され、世界に数あるリメイクドラマのなかでも成功例と言えるものになっています。さらにトルコ以外でも海外でのリメイクが相次いでいます。これまで韓国、ウクライナ、タイ、中国、フランスなどでリメイク版がつくられ、今年はスペイン版がリリースされ、新たな感動を生んでいます。

なぜ「Mother」は、時代も国境も超えて、強いコンテンツ力を持ち続けているのでしょうか。スペイン版の製作総指揮者(ショーランナー)であるエドアルド・ガルド(Eduardo Galdo)氏に話を聞き、その理由について考えてみました。

スペイン版が配信でヒットを飛ばす


日本版の「Mother」は、松雪泰子が女児を誘拐して母親となる女性教師役を演じ、芦田愛菜はその女児役を好演して、大きな反響を呼んだ作品です。他にも、母親役の尾野真千子や、田中裕子も登場し、演技派の女優陣が女性として、人としての生き方を強烈に訴えかけた名作です。


「Mother」(c)日本テレビ

脚本は、「大豆田とわ子と三人の元夫」や「カルテット」、「東京ラブストーリー」などの代表作を持つ坂元裕二によるオリジナルで、その後、世界へと広がることになった原動力もこの素晴らしい物語にあったように思います。

今年、スペインでは、民放大手テレビ局「Atresmedia」が直下のデジタル配信プラットフォーム「Atresplayer Premium」で4月からリメイク版の配信を開始し、人気を得ています。

スペイン語圏のテレビ業界で権威ある賞「PRODU Awards 2022」のベストリメイク部門ではノミネート作品に選ばれ、「最優秀女優賞」を“本当の母親〟役のマリア・レオンが受賞しました。さらに、スペインの映画祭「Fical」のテレビ部門のアワードでも「ベスト連続ドラマ」にノミネートされるなど、さまざまな賞レースで注目されています。


エドアルド・ガルド氏(撮影=長谷川朋子)

そんな人気が高まるスペイン版「Mother」を実現させた製作総指揮のエドアルド・ガルド氏と、9月末に開催されたスペイン最大規模のドラマイベント「イベルセリエス(正式名称はIberseries & Platino Industria)」の会場で日本テレビ海外事業部の明比雪氏の紹介で、直接会う機会を得ました。企画制作者の立場からドラマ「Mother」の世界的なヒットの理由を語ってもらいました。
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文=長谷川朋子

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