しかし、多くの組織の人事部は、知識が豊富で、信頼もでき、数も多く、影響度も大きいリクルーターとしての従業員という、この価値あるアセットを生かし切れていない。
米国人材マネジメント協会(SHRM)が公表した新たなベンチマーク報告書によると、従業員を1人新規採用するときにかかるコストは、その採用ポジションに支払われる給与の3倍から4倍だと、多くの雇用主は見ている。
採用プロセスにおいて、自社の人材を積極活用すれば、採用コストを大幅に削減できることは言うまでもない。では、その方法を説明しよう。
従業員が人に紹介したくなる職場づくりを目指す
まずは、従業員が人に宣伝したい、紹介したいと思えるような職場をつくろう。従業員が自社を積極的に宣伝したいかどうかを確認するためには、ネットプロモータースコア(NPS)を利用するといい。NPSは、企業が消費者にどのくらい愛されているかを示す指標だ。このスコアが予想より低かったときは、従業員が宣伝したいと思える職場環境を目指し、必要に応じて職場を改善しよう。
ご存じのとおり、好きなブランドを熱心に勧めるマニアたちが存在する。アップルやハーレー・ダビッドソンがその好例だ。職場としての自社についても、同様の熱意で宣伝してもらえたら素晴らしいはずだ。
従業員に、会社のレビューを投稿してもらう
従業員たちに、キャリア情報サイト「グラスドア」に自社についてのレビューを投稿するよう呼びかけよう。従業員が宣伝したいと思えるような職場づくりを心がけているなら、レビューを投稿されても怖くはないはずだ。真に活気があって、インクルーシブで、キャリア開発や成長、学びの機会に満ちている職場であれば、「レビューが悪影響になるのではないか」と心配する必要はない。
近ごろは、レストランに行く前にも、ネットでレビューを読むのが普通だ。雇用主としてのブランドに関するレビューもまた、求人募集に集まってくる未来の従業員に大きな影響を与える。
従業員に「アンバサダー」になってもらうプログラム
従業員に「ブランドの声」になってもらおう。全社を挙げて、会社の最新情報や業績などを発信すれば、その声はデジタル上に一気に拡散するだろう。
会社のメッセージは、通常のコミュニケーションチャネルを使うより従業員が伝えたほうが、インパクトや信頼性が増すことは、よく知られている。露出を増やすこうしたやり方は主に、従業員が会社の価値を顧客に売り込むマーケティング活動で活用されている。従業員に働きかけて、ブランドアンバサダーの役割を担ってもらえば、未来の従業員に向けて、職場に関するメッセージも発信することができる。
従業員全員に、ソーシャルメディアを利用するよう呼びかけよう。そして、求人情報や、従業員が行っている印象深い活動、会社の福利厚生や学びの機会についての情報、コミュニティや社会への貢献に関するニュースなどをシェアするよう推奨しよう。
会社の標準的なコミュニケーションチャネルよりも、従業員のほうが信頼度が高い。全従業員を合わせたフォロワー数はおそらく、会社自体のフォロワーを上回っているはずだ。