消滅可能性都市として過疎化が進むこの町では、ここ数年、官民一体の地域活性化が行われてきた。2020年8月からは、住民のマイカーを利用して高齢者の送迎を行う「ノッカルあさひまち」を開始。博報堂やスズキ、地元のタクシー会社(運行管理)が協力して、地域の新たな公共交通サービスを構築してきた。
その朝日町は、11月2日、博報堂と共同で、国が推し進める「デジタル田園都市構想」の社会実装をすると発表した。中身は、小中学生向けの起業家教育や習い事の送迎、地域住民同士の学び合いだという。
官民一体の地域活性化の取り組みを始めて約2年。どのような変遷をたどり、事業を推し進めてきたのか。また新たに発表された事業の狙いとは何か。現地で取材した。
次々と事業を推し進める朝日町
当初、ノッカルあさひまちは町の職員がスズキの軽自動車を運転して、住民を送迎する形で実証実験を始めた。2021年10月からは、住民の自家用車を使用するサービスが本格運行に入り、料金は1人で乗る場合は距離に関係なく600円、相乗りは400円。乗客は朝日町のバスの回数券(1枚200円)を運転手に手渡す。その後、運転手、町、運行管理を行う地元のタクシー会社に200円ずつ配分される仕組み。
LINEで予約ができ、現在の利用は1日あたり5件ほどで、これまで町の人口の4分の1にあたる、のべ2500人に活用されたという。利用者のなかには、「人工透析で病院に行く必要があるが、ノッカルのおかげで入院せずに自宅から通うことができる」という住民もいる。
また、今年4月には町役場に「みんなで未来!課」をつくり、公共交通、行政、脱炭素、子育ての4分野でDXを進める取り組みを始めた。
そして今回、「デジタル田園都市構想」の社会実装を開始したと発表したが、この構想は、2021年に岸田文雄首相のもとで発表された「デジタル実装を通じて地方が抱える課題を解決する」という取り組みに端を発している。
よって国から社会実装を推し進めるための交付金を自治体は受け取ることができる。交付金には3つのタイプがある。朝日町は、今年6月、「構想の早期の社会実装」を目指す「Type3」に採択された。Type3に選ばれているのは全国で6つの自治体だけで、注目も高い。