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2022.10.27 16:30

「クルマではなくHonda」を買ってもらう。ワイガヤ文化の再構築で挑む第二創業

三部敏宏

三部敏宏

発売中の「Forbes JAPAN」2022年12月号の特集「人と社会を活かす会社100」では、東証プライム上場企業を対象に「ステークホルダー資本主義」「人的資本」「ダイバーシティ」「気候変動対策」「持続可能性」「働きがい」「非財務情報開示率」の7つのランキングを作成した。

「世界で最も働きがいのある会社」ランキングで日本企業のトップに選出された本田技研工業。

脱炭素の流れを「会社変革の絶好の機会」と言い切る三部敏宏が目指す「ホンダイズム」とは。


「世のため人のため、自分たちが何かできることはないか」

本田技研工業(以下、Honda)の創業者・本田宗一郎が語ったこの言葉がホンダイズムの原点だ。

東京・青山にある本社ロビーには、テレビCMにも使われている「きょう、だれかを、うれしくできた?」というキャッチコピーが掲げられている。創業から74年を経てなお企業理念にブレはない。

2021年4月、三部敏宏はHondaの代表取締役社長に就任した。自動車業界が100年に一度の大変革期を迎えるなか、いまを第二の創業期と位置づける。社長就任会見では、50年にHondaがかかわるすべての製品と企業活動を通じてカーボンニュートラルを目指すこと、そして全世界でHondaの二輪車、四輪車が関与する交通事故死者をゼロにすることを目標に掲げた。「会社の存在価値を見つめ直すには絶好の機会だ」と三部は話す。

「企業は安定して右肩上がりで成長していると、大きく戦略を変えられない。効率を上げ、コストを下げて利益を生むことは企業としては当然ですが、一方で新しいアイデアや独創性を阻害する側面もあります。過去の経営陣にもHondaらしさが薄れてきているという感覚はあったと思います。だから『我々は新しい未来に向かって進む。そして新しい歴史を皆さんがつくるんだ』と従業員に言い続けています」

脱炭素の流れが待ったなしのなか、Hondaは電気自動車(EV)と燃料電池自動車(FCV)の販売比率を先進国全体で30年に40%、35年には80%にすると宣言。40年にはグローバルで100%を目指す。二輪車も電動化を推し進めるほか、電動垂直離着陸機(eVTOL)や宇宙事業にも参入し、再使用型の小型ロケットの開発にも着手している。22年3月にはEVの分野でソニーグループとの提携を発表し、大きな話題となった。

「すべてのモビリティにHondaのロゴがついているのが理想の未来です。陸海空がモビリティでつながっていて、eVTOLなどがバンバン飛んでいる。SF映画的ですが、30年後には間違いなく実現していると思います。我々はいち自動車会社ではない。お客さんたちはクルマを買いに来るんじゃなくて、Hondaを買いに来る。新しいHondaを創りたい」
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文=藤野太一 写真=小田駿一

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