ビジネス

2022.10.25

「台湾」を強調しない世界的ブランドを目指して、台北ファッションウィーク開催

台北ファッションウィーク2023春夏のランウェイより(台北ファッションウィーク)


まず表現すべきは作品と世界観


ファッションデザインはときにはアーティスティックな行為であり、そして時には社会的な行為だが、最終的には商業行為であることを思えば、ブランドの成功を決めるのは消費者であるといえる。その観点から、台湾のブランドであるということはどの程度の重要性を持つだろうか。

例えば、今回の台北ファッションウィークには参加しなかったブランド「APUJAN」は、ロンドンのロイヤル・カレッジ・オブ・アートで学んだ後、拠点をロンドンに置き、2013年のロンドンコレクションでデビューした。昨年からはドラマ性のあるショートフィルムというユニークなかたちでコレクションを表現している。今後はランウェイとショートフィルムのハイブリッドでコレクションを発表していく予定だという。


APUJANのデザイナー、詹朴。日本の生地も使用するという(Jerry Tian Ying Min)

自身が台湾人であるということを、デザインやマーケティングの上でどう考えているかとデザイナーの詹朴に聞いてみたところ、まず最初に表現すべきは作品と世界観であり、自分が台湾人であるということは最後だと言い切った。それを表立って言うのはトゥーマッチであると。

彼のいうことにも納得がいく。今回、台北でも「イッセイミヤケ」や「ヨウジヤマモト」を着ている人を多く見かけたが、おそらく彼らは、日本人デザイナーの服だからという理由で選んだわけではないだろう。

サステナビリティはあえて前面に出すことではない


今回の台北ファッションウィーク2023春夏の開幕ショーでは、台湾の先住民族の人間国宝とデザイナーがコラボレーションし、伝統的な織物や布を使った作品が披露された。まさにアートのような衣装はどれも美しく、人間国宝とデザイナーが手を取り合い最後にランウェイを歩く姿は感動的だった。

しかし消費者からすれば、時代の空気感をとらえ、自分の好みにぴったりと合った服が、結果的に台湾ブランドのデザインであるという順番の方が良いと思える。サステナビリティについても、今回訪れていたニューヨークコレクションのディレクター、ノア・コズロフスキーとの対話の中で、VOGUE Taiwanの編集長であるレスリー・サンが「サステナビリティは実現されていて然るべきもので、あえて前面に出すことではない」とピシャリと述べる一幕があった。


各国から台北ファッションウィークの取材に訪れたジャーナリスト達(Jerry Tian Ying Min)

今回、ショーで見て気に入った台湾ブランドの服を購入し、東京へ着て帰った。その服、良いねと言われて初めてこれは台湾のデザイナーの服なのだと話すことができる。加えて、ブランドが大切にしている哲学や、実現したいサステナビリティについて語ることができれば最高だ。

こういったシーンがあちこちで見られるようになれば、台湾のブランドであるということをことさらに強調しなくても良くなる日がくるだろう。すでに、いくつかの台湾ブランドには、世界のファッショニスタたちに身につけてもらうための十分な実力が備わっているように見える。少なくとも私は、来春の服を台湾ブランドで揃えるために、再び台北に行きたいと考えている。

編集=安井克至

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