ハイテクハブとして台湾の勢いは「衰えつつある」

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在台湾米国商工会議所(AmCham Taiwan)は、台湾を世界有数のテック研究開発ハブにする勢いが「衰えてきており、場合によっては止まっている」とみている。このほど発表した年次報告書の中で指摘した。

「台湾を世界有数の技術・医療研究開発、産業革新、DXの拠点とし、さまざまな産業分野における外国投資の魅力的な場所とする勢いは衰えており、場合によっては勢いが止まったとさえ会員企業は感じている」と台湾米国商工会議所は指摘。「特に台湾は国際的な注目、支援、好意が集まる『黄金期』を迎え、今その地位に甘んじているときではないというのが我々の考えだ」としている。

台湾米国商工会議所は「台湾の国際的な競争力を高めるよう、また米国など密接な関わりがある経済パートナーとの統合を加速させるためにもっと努力しなければならない」と政府関係者に要望した。「今年の白書には台湾米国商工会議所の産業委員会の多くの人々の不満が反映されている」とある。

台湾には現在、世界有数のテック企業、特に半導体分野の企業が多く進出している。ここには、チップメーカーでインテルのサプライヤーである台湾積体電路製造(TSMC)が含まれる。アップルサプライヤーで富豪テリー・ゴウが率いる鴻海科技集団(フォックスコン)、ペガトロン、ライトンテクノロジー、インベンテック、キャッチャー・テクノロジー、大立光、コムペック・マニュファクチュアリングなども含まれる。

台湾米国商工会議所の報告書では、台湾が人口の80%以上にワクチンを接種し、2021年の経済成長率が6.28%と過去11年間で最高となるなど、過去12カ月間の経済環境の「数々の変化」を指摘している。

その他、中国本土の操業停止やウクライナでの戦争による世界的なサプライチェーンの混乱が続いているなど、2022年の台湾の予想経済成長率が4%未満に引き下げられるほど好ましくない変化が起きているとも指摘した。

同商議所は「台湾独自の産業規制や基準を作り、往々にして国際的なものより制限の多い政策が多すぎる」と批判した。このような傾向は、台湾がこれまで以上に世界とつながることを困難にし、外国人投資家や台湾市場への参入や台湾での事業拡大を目指す多国籍企業にとって、台湾の魅力を低下させる」とした。

「その他の規制上の障壁はより業種に特化したものだ。例えば、製薬会社や医療機器メーカーは長年にわたり革新的な新製品の承認に必要な長い審査時間や、一般的に提示される低い償還価格を批判してきた」とも指摘している。「その結果、親会社はしばしば台湾市場を重視することを躊躇してしまう」

「したがって、台湾が貿易と投資に対する未解決の障壁を取り除き続けるか、少なくとも必然的に敏感な分野に関わる交渉に参加する意志を示すことが重要だ」と述べている。

また、台湾のエネルギーと労働力の供給に関する懸念にも言及している。「台湾には高学歴でモチベーションが高く、勤勉な人材が多く、その多くは海外で教育や訓練を受けている。このような人材は台湾の最も貴重な経済資産の1つだが、台湾はいくつかの主要産業における人材不足と、それほどスキルのない労働者の不足に悩まされている」とある。

「会員企業は台湾の労働力の信頼性、ビジネス倫理、献身を常に称賛する一方で、台湾の従業員の国際感覚の欠如と英語力の遅れをよく嘆いている。この状況を改善する1つの方法は、台湾が外国人人材を誘致する努力を大幅に拡大することだ」と提案している。

年次報告書へのリンクはこちらから。

翻訳=溝口慈子

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