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2021.03.04 10:00

「我々はいつも迷子、だから楽しい」、台湾デジタル大臣がAI時代の生き方を助言

語り合う上田岳弘氏(左)とオードリー・タン氏(右)。

早朝に純文学を書き、日中は起業したIT企業の役員を務める「クロステックな作家」上田岳弘氏が「アート&テック」をテーマにアーティストやテクノロジストと語り合う。今回の対談相手は台湾のデジタル担当政務委員(通称デジタル大臣)、オードリー・タン氏。AI(人工知能)などITの進化が続き、人間の活動を代替していったとき、「最後に残る、人がやること」は何か。タン氏の答えは「迷子になること」という、意外なものだった。(構成=谷島 宣之、通訳=大石 有美)

前回記事:「世界は1つになり、終わるのか」、台湾デジタル大臣とIT企業役員の作家に見える未来


上田:AI(人工知能)でやれることはAIに頼む。それを続けていったら最終的に人間は何を考えればよいのか。そのことが気になります。何を人間に残して、何をAIに任せるのか。タンさん、何だと思いますか。

タン:主に考えられるのは迷子になること、迷子だと感じることです。台湾には「ウーニェン(無念)」という言葉があります。「考えない」という意味です。何も考えていないのではなく、心が無になっている夢の中のような状態(revery)、1つの可能性にこだわらず、色々な可能性を広げていく、といったことです。「revery」について考えることが私たちに残るでしょう(注1)。

上田:なるほどなあ。AIに色々なことを任せていき、最終的に人間は何をすればよいのか、という問いへの回答をまさに直球で小説の一部に入れたことがあります。答えは、人間は永久に悩んでいることができる、というものでした。悩み続ける、これが最終的に我々のやることかなあと。そういう悩みの果てに僕は小説を書いています(注2)。

注1:「無念」は雑念や妄念が無いという意味。ウーニェンと発音するが「うらめしい」ということではない。

注2:「悩み続ける」という答えを書いた作品は『惑星』(『太陽・惑星』(新潮社)に収録)。
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文=谷島 宣之

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