健康経営とウェルビーイング 「従業員のため」には身近なことから

人材会社LUF社長の吉本明加(左)とibuki代表で健康経営アドバイザーの平井孝幸(右)


ウェルビーイングという言葉が政府の骨太の方針に明記されたのは2021年。健康経営は、遡ること2015年に、経済産業省と東京証券取引所が共同で、一定の基準を満たす上場企業を選定・公表する「健康経営銘柄」を始動。同銘柄に認定される企業数は年々増えてはきている。

しかし平井は、「健康経営という考えは広がっているように思えても、健康経営度調査に対応することに意識がいってしまうなど、実は表面的な取り組みをしている企業がまだまだ多い。健診結果や喫煙率をKPIにする企業は減ってきたものの、社員のウェルビーイングがおざなりになるケースは少なくない」と警鐘を鳴らす。

銘柄認定を意識するような大手が、“ウェルビーイング経営”や“健康経営”と掲げる看板に恥じぬよう、経営に資する取り組みを増やしていき、それに触発された従業員の健康意識やリテラシーが上がっていくことが、のちには国の医療費適正化などにも結びつくと語る。

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吉本は、投資対効果が見えにくい健康経営を浸透させるためには、「いかに経営層に効果を実感させるかがカギになるのではないか」とコメント。平井も、各施策における経営層の参加率を高めることが新たな企業文化を醸成させていくことに繋がり、その結果、従業員ひとりひとりの意識変容や行動変容に大きな影響を及ぼすと同意。そのうえで、IBUKIがさまざま実施してきた施策のなかでも、著しい効果を上げたのが、ゴルフを活用したエクササイズだったという。

「健康になろうと言ったところで、そもそも健康に関心を持つ人たちは少ないというのが現実です。一方で、趣味で毎週のようにゴルフをプレーしている人たちは、そのためのお金も時間もいとわなかったりします。そのゴルフへの熱量を健康のために転換できればいいのではないかと、プロゴルファーや整形外科医に協力してもらい、 “Golfing”というオリジナルプログラムをつくりました」

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実は平井はかつてプロゴルファーを目指したほどの腕前で、大学卒業後にはゴルフ事業で起業した経験も持つ。健康経営に関する知見と情熱をもって、体幹強化や姿勢の改善、インナーマッスル活性化による痩せやすい体作りにつながる同プログラムを実施したところ、クライアント企業の社長を筆頭に、経営陣や管理職の反応がよく、役員/管理職層の参加率が60%を超える企業もあったという。

「ゴルフに限らず、意思決定層や健康無関心層を惹きつけられる施策が重要で、そのためにターゲット層が何を求めているのかを捉える必要があります。そんなマーケットインの考え方と、健康要素を組み込むことがこれからのウェルビーイング施策だと考えています」

自身も経営者である吉本も、「社長や役員も参加することは素晴らしいこと。一人ひとりが、心身ともに輝きながら活躍できる未来を作っていきたいですね」と、総括した。

文=小谷紘友

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