ソニーが嗅覚測定をDX、独自の「におい制御技術」が持つ可能性

ソニーが独自のにおい制御技術「Tensor Valveテクノロジー」を搭載するスマートデバイスを発表


現在、国内で一般に行われている嗅覚能力の測定は約半世紀に渡って知見が蓄えられ、その手法を確立してきたものだ。一方では測定に多くの手間と長い時間がかかり、正確なデータを導き出すためには専用の空調設備を配置した試験室が必要になる。つまり、精度の高い嗅覚測定は可能だが、検査士と被験者の双方に少なからぬ負担がかかることが課題とされている。

時間と手間をかけて、人の手によって実施されている嗅覚測定にデジタルトランスフォーメーション(DX)をもたらしワークフローの簡略化を図ることが、ソニーがにおい提示装置「NOS-DX1000」を商品化する狙いだ。

パーソナルアロマディフューザーから派生進化


現在人の手によって実施されている嗅覚測定は、異なる嗅素(においの素)を付着させた試験紙を用意して、被験者にこれを順番に嗅いでもらうというワークフローを採っている。データの取得が必要な嗅素の数が多いことと、検査室に臭気が充満して混ざり合わないように、特殊な空調設備を配置することも高いハードルになっている。

NOS-DX1000は持ち運び可能なサイズを実現した、嗅覚測定のための装置だ。本体に5種類・8段階の濃度で構成した嗅素を封入した専用の高気密カートリッジを装填し、1台のデバイスで複数の嗅素を同時に制御する。

被験者は正面上部の吹き出し口に鼻を近づけてにおいを嗅ぎ分ける。嗅素を効率よく、速やかに被験者の鼻に噴霧するため、高出力なアクチュエーターと呼ばれる電子部品をソニーが新規に開発した。これを計40台、においが異なるカートリッジと1台ずつ直結させて本体に内蔵している。

ソニーの藤田氏は、独自の「におい提示装置」を開発する過程で「アクチュエーター自体の開発にもソニーの先進技術が活きているが、複数のアクチュエーターを本体の内部に配置するための小型化・効率化の技術を確立することに腐心した」と説く。


におい提示装置の専用カートリッジ。無臭を含む40種類のにおいを封入したカートリッジを本体に内蔵したことで、測定時に「臭いの差し替え」を行う手間を省いた
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編集=安井克至

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