ソニーが嗅覚測定をDX、独自の「におい制御技術」が持つ可能性

ソニーが独自のにおい制御技術「Tensor Valveテクノロジー」を搭載するスマートデバイスを発表

Sony(ソニー)が人の健康管理に関わる商品やサービスの開発に役立てることを目的とした、独自の「におい制御技術」「Tensor Valve(テンソルバルブ)テクノロジー」を発表した。

ソニーといえば視覚・聴覚に関わるエンターテインメント分野のエキスパートだ。今後は嗅覚にも独自のアプローチを通じて新たな価値の提案に力を入れる。やがてはソニーの新たなビジネスの支柱に育てる考えだ。テンソルバルブの技術と、これを搭載する製品の開発にも携わるソニーの藤田修二氏に展望を聞いた。


研究・測定向けに開発された、ポータブルサイズのにおい提示装置「NOS-DX1000」

独自の「におい制御技術」が嗅覚測定を簡略化


ソニーのテンソルバルブとは、複数の「においの素(嗅素)」を混濁させることなく、均一の濃度で人の鼻先に届ける「におい制御」の技術だ。

説明だけを聞いてもその使い道のイメージがわかないと思う。ソニーはテンソルバルブテクノロジーを搭載する「におい提示装置」という、新カテゴリーのエレクトロニクス商品を発表した。本機の特徴と使い方を知ると、におい制御技術の意義がよくわかる。

におい提示装置の名称は「NOS-DX1000」嗅覚に関する研究・測定向けの業務用デバイスとして2023年春にソニーが発売を予定する。価格はオープンだが、想定売価は230万円前後が見込まれる。


本体上部の嗅素が吐出されるノズルに直接鼻をあてて測定を行う

人間は嗅覚を通じて食べ物の魅力を感じたり、気分を落ち着けたりもできる。また嗅覚は腐敗した食品のにおいを嗅ぎ分けたり、煙やガスの臭いを察知したり、身を守るためにも欠かせない感覚の1つだ。

年齢を重ねるたびに人の嗅覚は徐々に低下する。近年はさまざまな研究により、病気が嗅覚の低下を引き起こしたり、その進行を加速させることもわかってきた。

医療学術領域の研究ではアルツハイマー病、レビー小体型認知症、パーキンソン病に代表される神経変性疾患を患った時に、1つの前駆症状として嗅覚が著しく低下するという報告もある。嗅覚能力の測定は、疾患の早期発見にも役立てられている。
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編集=安井克至

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