ソニーが嗅覚測定をDX、独自の「におい制御技術」が持つ可能性

ソニーが独自のにおい制御技術「Tensor Valveテクノロジー」を搭載するスマートデバイスを発表


ソニー独自の技術とアイデアを、嗅覚測定のための「におい提示装置」の開発に活かせるという道筋が作れたことで、藤田氏は「多くの方々から寄せられる期待に応える価値提案につながり、社会貢献も果たせることが私たち開発者のドライビングフォースにもなった」と振り返る。

におい提示装置の開発過程では、AROMASTICのノウハウをベースにさまざまなタイプの商品を想定した試作も実施した。ソニーが得意とする「視覚・聴覚」の領域で感動を創出するVRデバイスに、新たに「嗅覚」による仮想体験を追加するプロトタイプを制作して展示会に出展、好評を得たこともあると藤田氏は語る。ソニーでは今後も引き続き「エンターテインメント分野」にテンソルバルブの技術を活かす道も模索するとしている。

パートナーとのオープンイノベーションにも注力


藤田氏が所属するソニー株式会社の新規ビジネス・技術開発本部は、ソニーグループが持つ独自技術を基に、ソニーが中長期的な企業の成長を実現するための新規事業を立ち上げることをミッションとする部署だ。

2022年9月半ばに発表した補聴器事業は、ソニーがデンマークのWSオーディオロジー社とのパートナーシップにより米国を中心に展開する新規事業の「種」だ。これに続く第2弾として発表された「におい制御技術」のテンソルバルブも、これからのソニーを支える新規事業の柱になる可能性がある。


秋にはソニーが米国でデンマークのWSオーディオロジーとともに補聴器事業を展開することも発表されている

「嗅覚」に関わる価値創出については「今後もオープンイノベーションとしていっしょに新しい価値を提供する仲間をつくりたい」と藤田氏も話している。

今後は「におい提示装置」「NOS-DX1000」を医学系の学会や学術講演会にも出展し、来春の発売に向けてヒアリングを実施する。

本機は「におい」を扱う商品やサービスの企画開発にも活かせそうだ。またAROMASTICにおいて好評だった香りによるリラグゼーション、スポーツ分野、マインドフルネスの領域にパートナーシップが広がることも予想される。藤田氏は「今回の発表を受けて、寄せられた関心には一つひとつ丁寧にお答えしていきたい」と意気込みを語った。

連載:デジタル・トレンド・ハンズオン
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編集=安井克至

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