ウクライナ戦争終結後、兵器は闇市場に? インテリジェンスは世界をどう見るか

Getty Images


インテリジェンスの巨匠が教える「サードパーティルール」


手嶋:きょうはせっかく“インテリジェンスの巨匠”を迎えたのですから、インテリジェンスの文法なるものについて、いま少し詳しく解説していただけませんか?

佐藤:手嶋さんの小説に何度も出てくる「サードパーティルール」。私が手嶋さんから聞いた話を第三者に伝える場合には、必ず手嶋さんの了承をえる必要がある。単純な話に思えるかもしれませんが、必ず守らなければならないインテリジェンス世界のルールです。もうひとつ重要なのは、約束した事柄は必ず履行すること。裏を返せば、できない約束はしない。

手嶋さんの小説にはインテリジェンスの文法を守らない人も登場する。その場合、主人公の情報士官は、相手が違反した範囲内で、インテリジェンスの文法から外れた行動をとり、情報源や組織、国益を守る。そのあたりの記述もインテリジェンスの現場をそっくり映していますね。

手嶋:長い付き合いになりますが、佐藤さんが私との約束を違えたことがありません。サードパーティルールも守る。だから信頼関係が崩れないのでしょう。もっとも、佐藤ラスプーチンとの約束を破ったりしたら恐ろしいことになりますから(笑)。

佐藤:その意味では、インテリジェンスの文法は特別な話ではなく、様々な場面で応用できます。ビジネスでも就活でも研究にも活かすことができる。インテリジェンスの文法を知りたいのなら、前作の『鳴かずのカッコウ』もいいテキストです。

手嶋:『鳴かずのカッコウ』では、日本にある最小にして、最弱と言われた公安調査庁の若きインテリジェンス・オフィサーを主人公に据えました。

佐藤:しかも主人公はノンキャリアでしたね。

手嶋:そうです。『鳴かずのカッコウ』の発売は2021年2月。従って、ロシアがウクライナに侵攻するちょうど1年前。冒頭で、ウクライナ、とくにリヴィウの光景が登場します。メディア関係者のなかには「なぜいまウクライナ、それにリヴィウの街なんて誰も知らない」という冷ややかな受け止めもありました。でも、ウクライナ・ナショナリズムを語る上で、その策源地リヴィウは避けては通れません。『鳴かずのカッコウ』を読んでいただいた方には、ロシアのウクライナ侵攻前のロシアとウクライナの間柄やウクライナ・ナショナリズムについて知ってもらえたはずです。そして近未来に忍び寄る影も。
次ページ > ウクライナ情勢を理解する

.

ForbesBrandVoice

人気記事