惑星科学界では今、金星が注目の的

金星の活火山のイラスト。手前に見える地殻が地表の溝から惑星内部に入り込む沈み込み帯が描かれている(クレジット:NASA/JPL-CALTECH/PETER RUBIN)

太陽系外の惑星群は、私たちのすぐ隣にある惑星たちから科学者の注目を奪い続けている。しかし、もし2022年のEuroplanet Society Congress(EPSC、欧州惑星会議)に何らかのトレンドがあるとすれば、それは地獄のように熱い地球の仲間、金星への将来のミッションに向けられたまぎれもないうねりだ。

NASA(米国航空宇宙局)、欧州宇宙機関(ESA)、インドおよび中国が計画している新たな金星探査ミッションは、1990年にNASAのレーダー・マッピング探査機「マゼラン」、2006年にESAの「ビーナス・エクスプレス」が金星を周回して以来、かつてないほどの新しい興奮を巻き起こしている。

これらの活動が進められる背景には、大きな理由が2つある。1つは、いつか私たちの太陽系に似た太陽系外惑星系を理解したいと思うのなら、表面温度も気圧も極端に高いこの地獄の隣人を理解する必要があるということ。もう1つは、地球で起きている気候変動による破壊の理解を深めることだ。地球の長期的大気モデルを改善するためには、金星で何がおかしくなったかを理解する必要がある。

NASAはレーダー撮影、無線科学、重力感知を含む各種装置を装備した軌道ミッション、VERITAS(ベリタス)を2027年11月に打ち上げる。金星へは9カ月後に到着する予定だ。

科学者らはVERITASのデータを使い、レーダー撮影とトポグラフィーによる初めての全域・高解像度マップを作るとNASAは述べている。驚くことに惑星科学者たちは今でもマゼランのデータを使っている。しかし、VERITASは金星表面のレーダー撮影を新たなレベルに引き上げる。

探査機VERITASは、当初高度約3万キロメートルの極めて扁平な楕円軌道に投入され、その後約1年間空力制動飛行を続ける。次に高度180~250キロメートルの最終的な科学活動軌道に固定される。このため、2年間を予定している完全な科学活動は、打ち上げから2年半程度過ぎるまで始まらない。

VERITASは、初めて地表岩石組成マップを作り、赤外線スペクトル・ウィンドウを使い、惑星の密な大気を通して観測することで、表面の風化状態を突き止める。同ミッションは、最近および現在の火山活動の熱および化学的痕跡も探す。

VERITAS
探査機VERITUSがレーダーを使って金星の地形と地質の特性を表す高解像度マップ作っているところのコンセプト画像(クレジット: NASA/JPL-CALTECH)

NASAは、VERITASの科学的動機には以下の3つがあると説明した。1. 現在、金星ではどんな地質学的プロセスが活動しているのか? 2. コアの大きさと状態はどうなっているか? 3. 金星の内部深くに水が存在するとしたら、それは火山活動によって大気に到達するのか?

金星の表面地形を超高分解能でマッピングするために、VERITASはマゼランとは異なるレーダー波長を用いる。マゼランがSバンドだったのに対して、VERITASはXバンドレーダーを使用するとジェット推進研究所のレーダー科学者で、VERITASミッションのプロジェクト科学者でもあるスコット・ヘンズリーはいう。「マゼランのSバンドレーダーは波長が約12センチメートルだったが、私たちが使うのはXバンドなので波長は約4センチメートルだ」とのことだ。
次ページ > 金星が居住可能だったことはあったのか

翻訳=高橋信夫

タグ:

ForbesBrandVoice

人気記事